新しいものづくりがわかるメディア 学生起業→就職→渡米を経て建機スタートアップ起業 ARAV白久レイエス樹が歩んだ10年
知人を介して再びスタートアップに入るという選択肢もあったが、白久氏は「自分の実力を試せるなら」と、あえて第二新卒枠で就職活動を始めた。かつての人脈を頼ることもなく、50社ほどにエントリーシートを送った。スタートアップでのキャリアは就職活動では有利に働かなかったと白久氏は振り返る。
「大学で自律走行する海洋ロボットの研究をしていたことを評価されて、SUBARUに拾ってもらいましたが、面接で紅白歌合戦に出た話をしても、『紅白、見てないんだよね』と冷たく返されて(笑)。でも、自分の技術が通用するかチャレンジしたかったので、チャンスを与えてくれたSUBARUには本当に感謝しています」
白久氏は運転支援システムを開発する部署に配属される。数人でやっていたスタートアップとは異なり、何万人もの社員が集まり、メーカー同士がしのぎを削る巨大産業の開発現場。白久氏は今までとは違ったものづくりのダイナミズムに刺激を受けながら、新しいキャリアを進むかに思えた。
ある日、競合他社の自動運転にイスラエルのモービルアイなどスタートアップの技術が採用されていることを知り、白久氏は大きな衝撃を受けたという。
「それまでスタートアップはブルーオーシャンを切り開くものだと思っていましたが、巨大な産業の中で大企業が何十年も前から研究開発を進めていた領域にスタートアップが入り込んでいることに大きな衝撃を受けました」
新たに参入する余地がないと思われていた産業で、新しい技術を武器に大企業を出し抜くスタートアップの存在に強く揺さぶられた白久氏は、スケルトニクスでは果たせなかったスタートアップの戦い方を模索するようになる。
「スケルトニクスは自己資本でやっていましたが、モービルアイのように大企業と渡り合える技術を持つスタートアップは、外部資本をうまく活用していると気付かされました」
再びスタートアップを目指すのであれば、聖地であるシリコンバレーで学ぶべきだ。そうでなければ、またスモールビジネスで留まってしまう−−白久氏は1年5ヶ月でSUBARUを退職。渡米期間は2年間と決めて、比較的取得しやすい学生ビザを使って2016年にカリフォルニア大学サンタクルーズ校の夜間コースに入学する。