WHO、一律渡航禁止に否定的見解「南アのオミクロン株、報告に感謝」
【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)は11月30日、声明を発表し、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大を受け、世界各国が相次ぎ渡航制限措置を導入していることについて、慎重に実施するよう勧告した。渡航の一律禁止に関しては「国際的な感染拡大を防げない上、人々の生活に多大な負担がかかる」と否定的な見解を示した。
WHOなどによると、同月28日時点で、50カ国以上がオミクロン株への対応策として南アフリカなどからの渡航者の受け入れを制限しているという。
WHOは30日の声明で、渡航制限措置を実施する際には「根拠に基づいた」対応をすべきと指摘した。特定国からの入国を一律に禁じるような措置に関しては、疫学データの共有などを阻害するため「国際的な保健上の取り組みに悪影響が出る恐れがある」と懸念を示した。
WHOのテドロス事務局長は30日、オミクロン株について「まだ完全に解明されていない変異株から国民を守りたいという、全ての国の懸念はよく理解できる」とした上で、いくつかの加盟国が証拠に基づかず、渡航制限措置などを導入していることを「懸念している」と述べた。
また、「南アなどがオミクロン株を迅速に検出し、(WHOに)報告したことに感謝する」と発言。「正しい行動を取った国が他国から(渡航制限といった)ペナルティーを受けていることを深く憂慮している」と語った。
オミクロン株を世界で最初に発見、報告した南アのラマポーザ大統領は28日、世界各国が南アなどからの渡航を制限したことについて「科学的根拠に基づく判断ではない」と強い失望感を表明し、早期撤回を求めていた。