Back 4 Blood - レビュー
『Back 4 Blood』(以下、B4B)は、『Left 4 Dead』(以下、L4D)や『Evolve』を開発したTurtle Rock Studiosによる協力型ゾンビFPSである。「L4D2」から実に12年もの歳月が流れ、本作には「L4D」シリーズの精神的な続編としての期待が持たれていた。今回はその実態は何なのかを明らかにしよう。
……と本文に行く前に、今回のレビューは「複数のプレイヤーによる座談会」のかたちでお届けしよう。前から思っていたのだが、協力型FPSやチームを組んで遊ぶタイプのレビューはなぜレビュアーが一人で評価してることが多いのだろうか? それは日本でも他の国のレビューでも変わらない。実際には多様なプレイヤーが一緒になって遊んでいることが多いはずだろう。
なので今回は葛西祝氏、伊藤ガブリエル氏をはじめ、池田伸次氏、G.Suzuki氏などIGNにも寄稿するライターによるYoutubeチャンネルの「令和ビデオゲーム・グラウンドゼロ」のメンバーで本作のチームを組んでゲームプレイし、座談会としてレビューした。
なお、今回のレビューはメンバー全員がPC版でプレイしており、2021年10月14日に追加されたパッチが当たったバージョンを元にした10月末の時点でのゲームプレイの評価である。今後のアップデートによって、該当しない評がある可能性を込みで読んでいただければと思う。
葛西 祝(以下、葛西):さて『B4B』の評価って、メンバーのなかでも賛否が割れたよね。自分はダメだった。「L4D」シリーズがいかに完成度の高いゲームか、あらためて思い知らされた。今回はパッドでやってて、エイムも補正が効いたり配慮はあると思ったけど。
伊藤ガブリエル(以下、ガブ):僕と池田さんが好印象だけど、葛西さんとSuzukiさんの評価が低かったですよね。
池田伸次(以下、池田):僕は難易度に苦しみながらも、けっこう楽しみながら達成感を味わえたので、ゲームの印象は良かったですよ。自分はFPSの狙う、撃つ楽しみを感じたかったので、キーボードとマウスでプレイしていました。
ガブ:僕はおそらくこのメンバーの中で一番本作を楽しんだと感じています。もともと僕が「L4D」シリーズにこうあってほしい! と思っていた要素が追加されていたことも理由のひとつですね。負けたときにめちゃくちゃ悔しく感じることが結構ありましたし。この対談中も遊びたくなっているくらいにはハマっています。なお、私はキーボード・マウスで終始プレイしておりました。
葛西:自分も「ダメだった」と言いつつ、「対談中も遊びたくなる」はわかるんだ(笑)。ゲームを理解したうえで、馴染みの友達とチームを組んで連携を取ったり、ボイスチャットで戦略を相談しながら遊ぶとすごく面白い。でも野良で遊ぶと、それらがやりにくいのはもちろん、他の部分で厳しいことが多い。
要するに一点突破の魅力がある。野球で例えるなら、打率は低いけど打つ時はホームランになる打者みたいな。
G.Suzuki(以下、Suzuki):以前からの発表をみて「L4D」の再来だなと思いました。ただ、少しプレイした時に「『L4D』のデベロッパーだった」という過去から逃れられなかった作品とも感じましたね。ちなみに私はマウス+キーボードでプレイしました。
葛西:そうだね。「これこそ『L4D3』だ!」って評が英語圏の一部に見られたけど、そうはなっていないと思う。過去の「L4D」シリーズに引きずられているところが、本作の欠点を生んでいるのも否めない。そうした理由をここから語っていけたらいいかな。
葛西:あらためて「L4D」シリーズを振り返ると「ゾンビから生きのびる苛烈な内容だけど、初見のプレイヤーに優しい出来だったな」と思う。ゾンビから生きのびる協力型FPSとして、2008年に初代「L4D」、2009年に「L4D2」がリリースされてから10数年、いまでもSteamで万単位のプレイヤーが遊んでいるほどなんだ。
その理由はModなどいろいろ挙げられるけど、まずは繰り返しプレイできるゲームデザインなのは間違いない。初見で、正直FPSが下手でも「ゾンビから生きのびて、街から脱出する」体験が確実に得られるのは大きい。
さらに同じキャンペーンをプレイしても、AIディレクターの演出によって違う体験になることもそうだ。これはチームの腕前によって、敵やアイテムの配置をリアルタイムで変化させていく機能で、プレイするたびにゲームプレイが変わってくる。当時は1度クリアすれば新味がなくなってしまう協力型ゲームでリプレイ性を高めたことが新しかった。
池田:そうでしたね。
葛西:じゃあ「B4B」はどうなのかというと、初見のプレイヤーにはハードルが高いゲームなんだ。「L4D」と同じ協力型ゾンビFPSで見た目が似ているけど、体験の目的が根本的に違う。
どうしても最初の頃は「L4D」シリーズと比べてしまい、ゲーム全体の構成や、各ステージで無暗に広いレベルデザインなどが冗長だと感じてしまった。やりこんでいく中で「これはL4Dと別のゲームなんだ」と気づくのに時間がかかったよ。能力が追加されるカードシステムが揃うまで、ゲームの本質に気づけないゲームだと思う。
ガブ:「B4B」では「L4D」シリーズのゲームプレイをベースに、新たにカードデッキシステムが追加されているんですよね。これはプレイヤーが4人のキャラクターのうちの誰かを操作し、協力して進めていく基本的なゲームプレイに加え、チャプターをクリアするごとに、能力値が追加されるカードを1枚引いていく形になっています。
Suzuki:カードには、体力や弾薬の増加したり、特定条件で攻撃力が大幅に増えたり、チーム全体を回復させたりするものなど、様々なカードが用意されていますね。
葛西:「B4B」は「キャンペーンをクリアして物資ポイントを溜める」、「ポイントを使ってカードを入手する」、「カードのデッキを組んで、またキャンペーンへ向かう」というゲームサイクルで進んでいくので、カードシステムはゲームプレイの中核にある。ちょっとRPGみたいなところもあると感じたよ。
また最近のゲームシーンから考えると、カードシステムはある意味ローグライトっぽい印象もあるね。『Hades』みたいな。「L4D」シリーズも同じステージを何度も繰り返してゲーム体験の変化を楽しむところがあるから、それに似たデザインを入れたのも少しわかる。
Suzuki:ただこのカードシステムは、ローグライトのように完全なランダムじゃないんです。プレイヤーが事前にデッキを組むことで、カードを引く順番をある程度は決められるのが特徴でした。15枚のカードで構成されており、上から順に使いたいカードを並べることで、チャプターが進むごとに、どのカードを引けるかを調整できるんです。
葛西:能力の追加を制御できるのはちょっと新しい気はした。一方、カードは敵側も持っていて、「退廃カード」と呼ばれるカードをチャプターごとに提示してくるのは「なんだこれ!?」って思った。
ガブ:ああ~退廃カードはきつかったですね。あっちはほぼ完全にランダムで出てきましたね。
葛西:このカードは敵の能力を強化したり、マップに霧を発生させたりして、ゲームプレイを変えてくる機能を持ってる。一方で、「5分以内にクリアするとお金がもらえる」みたいにサブチャレンジのカードもある。ある意味、ゲーム体験を調整してきたAIディレクターの機能をオープンにしたものというか。
池田:けっこう退廃カードでゲームプレイは変わりましたね。話を戻して、プレイヤーが持つカードはいきなり全部使えるわけではなくて、キャンペーンに入る前のホームで物資ポイントを使って開放していくかたちなんですよね。
物資ポイントはチャプターをクリアするごとに手に入るものです。このポイントを使って、攻撃や回復などのカードが揃った、さまざまなカードセットを選び、一枚ずつ順番に開放していく。そして入手したカードをデッキに組み、キャンペーンに挑むわけですよね。
葛西:キャンペーンで稼いだ物資ポイントで、カードを開放するのが何に近いかというと、「ディアブロ」シリーズみたいなスキルツリーの開放だったな。
ガブ:「L4D」シリーズではキャンペーンひとつに3~4つのチャプターで構成されていましたが、今回の「B4B」ではACT制になっています。ACTひとつで9~13ものチャプターを進んでいく形なので、カードを引いて強くして生きながら先に進むのが面白かったです!
葛西:いわば「L4D」が映画のシリーズものなら、「B4B」はまるでNetflixやAmazon Primeオリジナルドラマみたいな尺になったよね。それが良いか悪いかはともかく。
池田:変な言い方になるかもしれませんが、カードデッキ構成によってプレイヤーがゲームプレイをデザインするような感覚がありました。デッキをしっかり準備することで、難易度が基本的に高い本作に挑むかたちだと思います。『PAYDAY 2』と『Killing Floor 2』を経由した文脈があるんじゃないかと。
ただこれは、カードが出そろってデッキ作成を楽しめる段階まで行かないとわからないですよね。
葛西:序盤はまったくカードが揃っていないのもあって、できの悪くなった「L4D」シリーズを遊んでいるような気持ちになるんだ。「L4D」にあったゾンビ映画の中を生き抜くような体験がまったくなくて、Turtle Rock Studiosはどうしてしまったんだとさえ思った。
ガブ:「L4D」シリーズはフレンドと一緒に楽しんでいた記憶があります。ただ、同時に僕自身は物足りなさも感じていました。皆で苦労しながらクリアするキャンペーンの報酬が達成感の共有と実績くらいだったので、もうすこしなにかクリアの喜びにつながる、キャラクターの成長要素やスキンなど新たに開放できる要素がほしかったんです。
葛西:えー! 「L4D」は成長要素はまったく必要ないからいいと思う。たとえ積み重ねていく要素が無く、味気なかったとしても。
自分は「L4D」シリーズは「どういう体験をさせたいか」が明快で、その体験を生むために不要な要素がないから良い。たどたどしいプレイでも「もしゾンビ映画みたいな状況に複数のプレイヤーと共に置かれたなら、無力なのがひとりかふたりいる」という体験へ自然となるのがすごいと思った。
ガブ:その点「B4B」で実装されたカードシステムは個人的に刺さりました! 難しいステージ群をがんばってクリアしたあとに、拠点へ戻って物資ポイントを使用、カードを開放してデッキを構築する。その繰り返しは「L4D」を遊んだときにはなかった達成感はありました。
カードの種類によっては「メイン武器を2つ所持できるようになる」、「走りながら銃を撃てるようになる」など、ゲームプレイの仕組みを変えてしまうくらいの能力もありますから。
葛西:軽く話していても、やっぱり「B4B」は「L4D」との比較は免れないよね。10年以上前のゲームであっても、いまだに影響力は大きくて。
池田:「L4D」シリーズは基本、FPSとしてシンプルですよね。ADSすらないタイトルで無骨でした。ストイックなゲームだったというか。それが「B4B」ではローグライトなカードデッキの自由度を足したことにより、もっと新規層も入ってこられるように意識して制作したように思えます。
葛西:自分は「B4B」が新規層が入りやすいデザインとは思わないな。むしろ「L4D」のファンも含めてふるいにかけるところが多すぎるよ。「L4D」がストイックというのも違うと思うし、むしろ逆の印象。初見プレイヤーでも入りやすいゲーム。
池田:というと?
葛西:「L4D」シリーズは本質的に “偶然出会った登場人物たちが、ゾンビのパンデミックから生きのびる体験をさせる”ゲームだから。あのゲームはすごく銃撃戦をするけど、体験の本筋には「極限の状況から生きて逃げのびること」がある。
つまり、よくあるゾンビ映画で、生存者たちが極限の状況で偶然に出会い、なんとか生き抜く中で自然と連携が生まれるストーリーをゲームデザインに落とし込んでいる。野良でゲームプレイすると周りが見知らぬプレイヤーばかりになって、むしろそんなストーリーの状況と同じになる(笑)。それが初見プレイヤーでも良い体験にできるポイントで、今プレイしても素晴らしい。
池田:「L4D」シリーズって実際「映画撮影をしている」って設定で、クリアするとスタッフロールが流れますからね(笑)。
葛西:プレイヤーがキャラクターの役をやってました! という(笑)。でも「B4B」って、プレイヤーが極限状況のなか、ミッションを完遂するスペシャリストになるゲームなんだ。ストーリーも含めてそう。
Suzuki:ストーリーを解説すると、世界中の人々が寄生虫「デビルワーム」に感染している状況なんです。そこで「クリーナー」と呼ばれるスペシャリストたちは、滅亡の縁に立たされた人類を救うために、寄生虫感染の脅威の原因となるゾンビ「リドゥン」と戦う物語です。だからリドゥンを倒すとミミズのような巨大な線虫が飛び出す演出が入るんですよ。
葛西:プレイヤーはそこでキャンペーンを繰り返し、物資ポイントを集めて、カードを開放し、戦闘や医療のスペシャリストになっていくんだ。つまり「L4D」と構図が逆になっている。見た目はほとんど一緒だっただけに、そこに気づくのに少し時間がかかった。
ガブ:同じ開発スタジオということもあって、「L4D」のイメージはどうしても拭えなかったですよね。難易度やゲームのモードによっても印象は変わりますが、僕にとっての「L4D」シリーズはフレンドたちとゾンビ映画を楽しむ、ポップコーンを食べるような感覚で遊ぶ印象でした。
葛西:B級映画をみんなで見るみたいな(笑)。
ガブ:その反面、「B4B」は「皆で一つのゲームをクリアしていく」という側面がより強くなっているように感じました。そのために皆でそれぞれプレイしながらカードを開放して、全員が万全の状態と構成で次に挑む。この部分はRPGやローグライトを好きな層に刺さりやすいと思いましたね。
Suzuki:「L4D」シリーズはテクニックが求められるゲームだったと記憶していますが。それだけでなく迷いにくいマップ構成や、特殊リドゥンが一体ずつ出現するパターンなど、Valveの品質管理が上手く働いていたのかなと思えます。正直「B4B」のマップや、特殊感染者が同時に多数出現するような、不安定な難易度なのは頂けないです。
プレイを続けてカードを解放し、デッキが組めるようになってやっと「L4D」との違いが現れてくるのは、なんだかもったい無いと思いました。
池田:今回の敵となるリドゥンのなかで、特殊リドゥンの発生タイミングに疑問を覚えるシーンはややありました。あまりに全員の体力が疲弊している状態でもバンバン出てくる。もちろんゲームオーバーまっしぐらです。
ガブ:チャプターによっては、敵がラッシュするタイミングが可視化されている箇所もあるため、そのぶん特殊リドゥンの数が多くなるとかであればわかるんです。だけど、それ以外の場面でも自然に出てくる特殊リドゥンの数が、難易度を問わず多かったですよね。
葛西:特殊リドゥンは最低難易度でもすごく出てきたね。 こんな采配をする「B4B」のAIディレクターを見ながら、「おい! AI監督の演出方針、マイケル・ベイに変わってないか?」みたいに思ったから。
Suzuki: (映画監督のたとえは無視して)ACT-3の終盤は最低難易度でも難しかったですね。何度も特殊リドゥンが登場して前進がままならず、最終的に特殊部隊のように行動報告と、ガチガチに行動手順を決め、迅速に動くことで、ようやくクリア出来たほどでしたし。
池田:ライフが全員少ない中、箱を空けても回復アイテムがぜんぜん入ってなくて、ただただ継戦するのが難しい、結局ゲームオーバーになる状況が多かったです。
AIディレクターは「L4D」では「ギリギリ生きのびること」を楽しませるためにアイテムや敵の調整をしているとのことですが、「B4B」ではそうじゃないのかな、と僕は感じました。
葛西:今回レビューするに当たって、あらためて「L4D」もやり直したんだ。「L4D」の体験って、基本的にゾンビ映画の持つ緊張と緩和を感じられるように演出してくれてると思う。「ゾンビが一斉に襲ってきて、生きのびた後にホッとする時間や場所」という、あの感覚を作ろうとしている。
でも今回「B4B」は、まるでアーケードゲームの高難易度チャレンジみたいな体験になっている。次々と敵と戦う挑戦課題が目の前に現れ、ホッとする瞬間はない。コンティニュー制限の導入もアーケードらしさを感じる。それはゾンビ映画のような緊張と緩和の体験とは別物だと思うんだ。
葛西:みんなで一緒にプレイするなか、池田さんやガブリエルさんはFPSとしての触りごこちや、ゲームとして挑戦しがいがある難易度を評価してたよね。このあたりは「L4D」の持つゾンビ映画シチュエーションを重視する自分と、プレイヤーとしての違いを感じていた。
池田:そうですね。はじめてプレイしたときに感じたのは、銃器の射撃がすごくよくなっていることでした。FPSとしての気持ちよさが「L4D2」よりもずっと増した印象です。まず「L4D」にはなかった銃の照準を覗き込むADSが実装されていて、精密な射撃ができるようになりました。かつ、銃器の種類も増えたので好印象です。
葛西:たしかに「L4D」より射撃や移動のアクションが細かくなっていたね。
池田:そうですね。キャラクターのアクションの進化がよかったです。たとえばしゃがみながらの射撃は、「L4D2」の時は後衛の邪魔をしないくらいしか意味がなかったじゃないですか。
ガブ:あったな~(しみじみと)。
池田:「B4B」ではしゃがみで射撃精度が上がったりするデザインになっていたり、カードに「しゃがむとフレンドリーファイアを受けなくなる」能力のものがあったりするのが好みでした。
また移動も現代的なFPSになっていましたね。ジャンプはパルクールみたいに、高いところでも登って移動できるようになっています。ダッシュはスタミナゲージで管理されていて、ずっとは走れないんですけど、残りのスタミナを見ながら「敵から逃げ回る」動作に戦略性を持たせていたのもいいですね。
葛西:確かに、いまの「コール オブ デューティ」シリーズから『Apex Legends』みたいなFPSの基本動作に合わせている雰囲気を自分も感じた。
池田: モダンなFPSのフィーリングに近いんですよね。スライディングがないのがかえって違和感があるほどです。
ガブ:スライディングで敵をキックしたかったなぁ~(寂しそうに)。
Suzuki: 銃については本当によくなっていますよね。ショットガンやアサルトライフルなど6種類の武器に取り付けられるアタッチメントそのものが、照準の変更(ACOGやホロサイトなど)だけでなく、バレル/マガジン/ストックそれぞれが火力アップなどパラメーターを強化させることに加え、カードによる性能強化も足される相乗効果もあって良くできていました。
葛西:モダンなFPSになったって話で言えば、やっぱり「L4D」より派手な敵や展開が増えた印象がある。巨大な敵の「オーガ」との闘いなんて、『ギアーズオブウォー』みたいだって思ったし。
Suzuki:『L4D2』にあった「車の燃料タンクにガソリンを入れる」とか、「遊園地で戦う」とか、そういった特殊なミッションやシチュエーションはほとんどなかったですよね。全編にわたって真面目な雰囲気で進行するのが違うと思いました。
特に、他の生存者を救出するシナリオもある点で、ただ逃げるだけだった『L4D』との差別化は図られています。他のギミックで言えば、ACT-3終盤に登場する対リドゥンに効くガスグレネードが有効に働いてるのも、ゾンビ系ジャンルそのものが10年前との違いを明らかにしていると思いました。
池田:プレイヤーを拘束して動きを止める特殊リドゥンがいるのは、「L4D2」の特殊感染者を引き継いでいますよね。クラッシャーもその1人で、巨大な腕でこちらを掴んで身動きを取れなくする特殊リドゥンです。脱出するためには、首元にある弱点を撃って倒してもらう連携が必要になりました。
ガブ:「弱点を即座に、的確に狙わなければならない」というスリルが本作におけるFPSの面白さをより際立たせているように感じました。本作はどうしても弾が尽きがちなので、アサルトライフルを一発一発大切にしながら確実に仕留めていく感覚は、ハリウッドアクション映画さながらの体験を味わえます。
しかし、ミッションの進捗や退廃カードの種類、プレイ難易度によっては、弱点を狙ってはいけなかったり、弱点を狙い続けないと全然ダメージが入らないなんてことも多々あります。その場合は、各種デメリットをかき消すようにしながら、弾丸ダメージのアップもしくは弱点特効のカード類をうまく構成する必要がありますね。
葛西:あとはチャプターごとのミッションの演出は「L4D」よりド派手にしていたね。序盤のフェリーの爆破から、終盤には特殊リドゥンと巨大リドゥンが入り乱れて大戦争するみたいにスケールアップして戦っていく流れは往年のAAAレベルのFPSっぽかった(笑)。
池田:ボスがちゃんといてキャンペーンとしての盛り上がりがあってよかったですよね。シューターしてるって感じで盛り上がれるし、難易度は高いですが戦闘を楽しめる。
ガブ:キャンペーン開始位置を変更したり、難易度を上げたりしながらプレイを重ねていくうちに、いままで出現してこなかった場所にもボスが現れることもあるため、常に驚きがありましたよね。
とっさの状況に放り込まれても、各ボスには弱点となる部分や攻略法がちゃんと存在しているので、諦めずにトライしていくといつの間にかスムーズに倒せるようになっていく。その成長をチーム一丸となって感じられるのは非常に良かったです。
Suzuki:プレイヤーが効率的な動きを習得するだけでなく、数値として成長しているのが「L4D」との最大の違いですよね。実際にプレイしていて、カード要素はある意味RPG的なパラメーターの向上に近いものでは?と思いながらプレイしていました。
葛西:FPSとしてリアル寄りになった一方、表現規制がけっこうキツめに入ってたのが印象はよくないね。
池田:出血や身体破壊といったゴア描写が削られていて、爽快感に欠けるのが惜しかったですね。敵が倒れるモーションや吹き飛ぶ動きで倒せたとはわかるものの。
Suzuki:特殊リドゥンのリーカーは倒されると粉々に爆発するんですが、規制が入っているため形そのままに吹き飛ぶだけなので、「リーカー系は倒すと爆発して危険」のが伝わりづらく、正直ゲームプレイに影響を及ぼしているようにも思えましたね
葛西:「B4B」をやりこんで見えてきたのは、これは「L4D」というより『オーバーウォッチ』や『VALORANT』に近いゲームじゃないかと言うことだった。つまりプレイヤーがDPSやサポートなど、個々のロールを自覚してチームを組むゲームなんじゃないかと。
池田:ヒーローシューターみたいにってことですよね。カードデッキ構成を練ることにより自分の役割を作り、高難易度の「B4B」各ステージに立ち向かっていく。
今回は各キャラクターに「スタミナ回復+25%・チームの移動速度+5%」みたいに各種のスキルがあるので、きっちりロール分けをしながらチームで戦うゲームデザインだと思います。
葛西:ストーリーとしてもクリーナーという、リドゥンと対抗するスペシャリストたちの物語だしね。「L4D」みたいに一般人が主人公じゃない。だからキャラごとに能力差を描いたんだろう。
今回チームを組んでみて、使うキャラからおのずと役割も決まったよね。みんなカードビルドも役割を拡張するかたちで組んでいたし。
ガブ:僕はホリーとカーリーを主に使用していました。ホリーはリドゥンを倒すと即座にスタミナを回復できるので、ダッシュや近接攻撃で減ってしまった分を補うことができます。
カードはスタミナ最大値を2倍に増やすカード「アドレナリン分泌」を使っていました。スタミナ回復効率が大幅に減るうえ、回復システムが変更されるデメリットを取ってスタミナ重視にしていましたね。走りながら射撃ができるようになる「ラン・アンド・ガン」やショットガンや近接武器をはじめとする近距離戦に特化したデッキ構成を行いました。
葛西:IGN JAPANの「伊藤ガブリエルのムチャぶり実況」で活躍してるとおり、チームの前衛で道を切り開く役割を頑張ってくれたよね。
ガブ:一方、カーリーは自身から一定範囲内の特殊リドゥンを探知することができる能力を持っており、チーム内での連携が取れれば奇襲にも難なく対応できるようになります。また、目標物やツールキットなどの使用速度が上がるメリットもあります。
それらの強みを活かして、危険のない距離から特殊リドゥンを処理すべく、アサルトライフルやスナイパーライフルなど中距離~遠距離武器を強化するデッキ構成にしていました。加えて、自身の使用速度を上げてくれるカード「ドライバー」などを含めることにより、ステージ目標もよりスムーズにこなせるようになります。
Suzuki:私はホフマンを使っていました。彼がリドゥンを倒すと弾薬が一定の確率で出現する能力があるんです。また、メンバーに選ぶだけでチーム全員が持てる弾薬の最大値を増やせる能力もあり、弾切れを起こしやすい「B4B」では役に立つキャラクターでした。
なので、なるべく広範囲の敵を継続して倒し、味方に弾を供給することを目標にしたデッキ構成にしました。例えばリロード速度向上の「マガジンカプラー」や「大型マグウェル」、ダメージと貫通力向上の「大口径弾」などを入れています。
葛西:自分がめちゃめちゃエイムが下手なのもあって、消去法で回復サポートが強いドクを使っていたな。「B4B」では回復に包帯や救急パックを使うんだけど、それらが無くても回復できる強みがあった。回復効率も高いので、チームのサポートやフォローに特化したカードデッキを組んでいくのは楽しかった。
池田:もともとはDPS担当のウォーカーを選んでました。このキャラはヘッドショットをすると射撃精度とダメージが上がる能力があるんですけど、クリアを目指す上でマムに変えました。
葛西:池田さんは前衛で特攻のスタイルが好きなんだけど、ちょっとゲームオーバーになりやすすぎるので、チーム構成を変えてみようって話し合って、思い切ってサポートのキャラにしたんだよね。
池田:マムは最年長のおばあちゃんキャラで、味方がダウンした時に即時蘇生ができるキャラなので、緊急時にすごく活躍しました。チームのエクストラライフを増やす能力を持つのも大きいです。
だけどDPSの役割でもありたいと思っていたので、みんなの能力を上げるビルドにしていました。誰かが倒れるとみんなの攻撃力が上がったり、時間が経つと回復が発生したりするカードを入れてました。
葛西:キャラクターの能力に合わせて、カードのデッキを組んでいくのはすごく面白かったよ。デッキとキャラの能力が合わさって、チームの連携にまで繋がったときの爽快感はすごいものがあった。これは「B4B」のもっとも魅力的なところだと思う。
池田:ただゲーム自体が難しくて、クリアを目指す上で役に立つキャラが決まってくるところはありませんか? ちょっとゲーム側にキャラクター選択を強制される感じがあって、あまりよくないのではと。
葛西:攻略に最適なキャラのピックが決まってくるところはあるよね。「B4B」は基本的に弾薬が足りなくなりやすく、特殊リドゥンが集団で現れることも多くて死にやすい。しかもスタミナの設定があるから、走って逃げようにも、スタミナ切れで途中で追いつかれたりある。
だからチームの弾薬所持数を増やせるのホフマンや、回復が強いマムやドクを入れて初めてまともにプレイできる感があって……。今回のメンバーでやりこんだところ、難易度ベテランまではホリー、ホフマン、マム、ドクが無難なチーム構成じゃないかな。……まあ許容できる範囲じゃないか?
ガブ:好きなキャラを使いたい時は、カードビルドでメリハリをつけることもできますしね。DPSのキャラだけど、回復や弾薬サポートのカードを含めることで活躍できるとか。
葛西:そうそう、カードビルドの裁量は大きいよね。一方、ゲームプレイしていて、ストーリーの表現としてはあまりキャラは立ってなかったように思う。キャンペーンの要所に豪華なムービーまであるのに、なぜか「L4D」よりもキャラが薄い気がした。
Suzuki:「B4B」のキャラクターは、弾薬増加や回復に特化した能力などから特徴を感じましたけれど、キャラ独特の掛け合いやセリフからは余り感じられませんでしたしね。ゲームプレイが忙しくて、セリフの字幕が読めなくなるせいもあります。それを考えると、音声は日本語吹き替えにしても良かったと思います。
ガブ:「L4D」のときは「俺はこのキャラメインでいくよ!」っていうのが仲間内で決まってました。特に能力差はないんですが、ビルやゾーイといったキャラクターの個性に惹かれて選んでいましたね。
その反面、「B4B」ではゲームクリアを重視していった結果、僕はキャラクターの好みよりも、キャラの能力や、カードのビルドを重視して選ぶことが多くなりました。
葛西:キャラにはっきりと能力がある設定だと、攻略の効率でキャラを評価するから性格とか気にしなくなるね。それも「L4D」のキャラクター性との違いに繋がってるんじゃないかな。
ガブ:なので本作はひとつのキャンペーンを頑張って攻略し、クリアする体験に重きをおいていますね。またカード開放という、いわゆる成長要素があることでプレイヤーのモチベーションになり、リプレイ性に繋がっているのかなと。
ガブ:また、今回お金を使って武器や装備を購入するベンダーという要素も追加されていますよね。お金はステージクリアの報酬だけではなく、チャレンジ攻略や、寄り道をすることでどんどん多く得られるようになっています。
このお金をうまくやりくりすることで、ときどきベンダーで入荷する「アイテム所持数増加」や「体力上限増加」など、キャラクターの能力を強化することができました。
Suzuki:このベンダーシステムはけっこう面白い要素でしたね。高額なお金を支払ってを使ってチーム全体の体力やアイテムが持てる最大数を底上げするか、個人の装備を揃えるのを考えるかが、トレードオフとして上手く機能していたようにも思えます。
池田:お金は自分の持ち金を地面に落としてほかのプレイヤーに与えられるから特にチームでやるときに戦略を練りやすくなっていますよね。
葛西:ベンダーのほかに、武器によってレアリティがあるのも特徴だよね。チャプターを進めながら、よりランクの高い武器へ切り替えていく。このプロセスは、ちょっと「ボーダーランズ」シリーズみたいなFPS&RPGの感じもあるな。
ガブ:武器にレアリティがあることで、ちょっとしたトレハン要素といいますか、武器の箱や隠し部屋を開けるメリットが高まっていましたよね。それが生存への道につながる場面も多くありました。
葛西:カードシステムにレアリティの要素など、「B4B」にフィーチャーされたいろんな要素を観ていると、「L4D2」から10年以上の間に流行ったゲームデザインがいくつも導入されている感じもあるな。まるで長い空白を取り戻そうとするかのようにも見える。
Suzuki:そういった点では「B4B」は「L4D3」でなく、『PAYDAY 2』など「L4D」フォロワーCo-opゲームの流れを本家が踏襲した、『L4D』シリーズへのアンサーとしてのゲームだとも思えます。
葛西:ここまで「B4B」のいろんなシステムについて評価してきたけど、わりと複雑なシステムをプレイヤーに自然と理解させ、どういうゲームプレイをするのが最適かを自然と学べる導線が弱いよね。
Suzuki:弱いですね。日本国内向けの公式サイトの説明も十分でないですし。
葛西:「ゲームレビューは難易度ノーマルを基準にするんだだみおー、イージーとかハードで遊ぶんじゃなくゲームデザイナーが最大公約数のプレイヤーに遊んでほしいものを基準に評価すべきなんだだみおー」ってことをいうゲーム業界の人がいて、まあ同意ではある。
だけどその基準となるノーマルにあたるモードがわかりづらいんだよ。ビギナー、ベテラン、ナイトメアの順に難易度が用意されていて、初見のプレイだとこの時点で迷うんだ。3段階あるからベテランがノーマルに見えるよね? 違うんだ。ほとんどハードモードなんだ。
ガブ:難易度については、「L4D」では4段階あったように、「B4B」はもうひとつ易しい難易度を追加してほしかったですね。ビギナーであっても中盤以降は友達とチームでプレイしても、野良でのプレイも関係なしに苦戦することが多かったので。
葛西:「L4D」を1000時間遊んでいる人は難易度ビギナーを選ばないよね。みんな最初はベテランを選ぶと思う。「L4D」のプレイ有無にかかわらず、初見プレイでは難易度選択の時点でゲームの基準となる導線がで無く、つまづくポイントがいっぱいある。
池田:間違いないですね。ビギナーって呼称自体に抵抗を覚えるプレイヤーは少なくないはず。ビギナーという名称がよくないですよね。
ガブ:本作はビギナーから始めて徐々に難易度を上げていく、というプレイングが最善と感じています。だけどその割にはビギナーで得られる物資ポイントの割合が少なくなってしまうのは納得いきませんでした。
葛西:それも含めて初見の印象が悪くなりやすいよね。カードがまったく揃ってないなかでベテランをやっても、単純にゲームプレイが機能しにくい。さっきも言ったように劣化した「L4D」に見えてしまう可能性がある。
もしかしたら開発側が長年の「L4D」ファンに「『L4D』と別のゲームなんだぞ」と思わせる意図があるのかもしれない。だけどゲームの本質だろう「カードを揃えてミッションを完遂するスペシャリストになる」誘導にはなってないと思う。
Suzuki: 何度もプレイしていて、確かに難易度はとても気になりました。4人で難易度ビギナーで遊んでいてもすごく難しくて、特殊リドゥンのひとつであるトールボーイが3体同時に出現するのは、明らかに不安定なバランスです。
池田:ほんとトールボーイめちゃくちゃ出てきましたね……めっちゃオレもデカい手で掴んで身動きを取れなくさせられなくなりましたよ! 弱点を集中放火すればすぐ沈むものの、エイム力がいるし、マジやっかいな敵。2、3体、同時に出現するのは、燃える展開というより難儀な展開に思えてしまう。
Suzuki:またACT-3における、後半のリドゥン無限湧きも正直面白さに繋がっているかと言えば、いたずらに弾薬を消費しジリ貧になるため繋がっていませんし。
池田:基本的には「L4D2」プレイヤーへ挑戦するかのような難易度だと思いました。かつてのプレイヤーを意識しているなと感じるのは「定石を覚えてもらって、チャプターのクリアだけを目指し、敵は避けてセーフルームまでマラソンしてもらう」という意匠ですね。
「L4D2」でも、うまい人が集まると戦わずに走り抜けていくゲームプレイが多かったんです。「B4B」でもそれを踏襲するかの如く、ベテラン難易度からは走り抜けないとクリアが難しかったりします。
葛西:たしかにベテラン以上の難易度で遊ぶと、リドゥンと戦うよりも「いかにセーフルームに走って到着するか」って戦略も考えるな。一人でも生きのびてセーフルームに到着していれば、チャプタークリアにはなるから。
ただストーリー上では「リドゥンと闘うスペシャリスト・クリーナー」のはずなのに、なぜかゲームプレイでは「L4D」以上に「戦うよりも逃げて生きのびるゲーム」になってしまうというか……。そこはどう思う?
池田:ビギナーの序盤中盤、もちろん後半もですが撃つことがかなり多い。だからメリハリが効いていてよいのでは、と思います。しかし対抗策は対抗策でほしいですよ。“ベテランやナイトメアでは最初からカードがバンバンオープンされる”などあれば違ったゲームプレイになりますし、楽しみ方も変わるでしょう。
ガブ:難易度の高さはカード開放システムの影響もあると思います。現状カード開放とスキン開放がごっちゃになっているうえに、決まったブロックをある程度開放していかないと、チームプレイに必須といっても過言ではないカードが手に入らないのですから。
たとえば、カード類とスキン類とでブロックを分けてプレイヤーに選択を委ねる。決められた20枚のカードのなかから自由に選びすべて開放し終えたら、次の20枚のカードグループが選出される、といったような形であれば、必須カードを取ったうえでビルドの個性も出しやすくなると思うんです。
葛西:いわゆるトレーディングカードのブースターパックのように、カードが選べたほうがよかったと。
池田:しかし貴重な物資ポイントを使わせる割には、周回プレイに適したチャプターで取得できるポイント数を減らしてナーフしたので、開発側がどのようなゲームバランスをプレイヤーに与えたいのかがちょっとわからないんですよね。
葛西:「B4B」が「L4D」と決定的に違うところで、「野良で遊んで満足できるか」もあるよね。「L4D」は野良でもチームでも、根本的な体験はあまりブレない。
Suzuki:ええ、確かにそうだと思います。
葛西:「B4B」は野良だとかなり難があると思う。たしかに友達とチームを組むと面白いよ。本作の本質は各プレイヤーがDPSとか回復役などの役割を自覚し、役割に合わせたカードのデッキビルドを組んで、スペシャリストのチームなることじゃないか。だから「B4B」はゲームの定石がわかっている人と、役割分担してチームを組むとめちゃくちゃ面白いよね。
池田:そう、チームワークがすごく輝くゲームデザインですよね! 連携が「L4D2」よりもより楽しく意欲を持って取り組める。お互いデッキが被らないようにとか話し合ったり、キャラクターはなにを使うか相談したりするのがとても楽しいです。みんながロールをまっとうする喜びがある。
葛西:そこが『オーバーウォッチ』感あるというか。でも、プレイヤーがみんなそういうチームを作れるとは限らない。
Suzuki:初プレイ時は何もカードを持っていなくて能力が揃っていないゆえに、自他共に気まずい雰囲気を生んでしまうのではないかと懸念があります。実際に、初プレイの自分より先に遊んでた葛西さんと一緒にゲームプレイした時に、戦術が噛み合わない時がありましたから。
葛西:「L4D」シリーズは個々のプレイヤーのスキル差やゲームプレイの進捗にかかわらず、初プレイでも入りやすいけど、「B4B」はプレイヤー間のやり込みの差が、カードデッキの差に出てしまいやすい。特にチーム全体を強化するカードも多いから、重要なカードをデッキに組んでいないとクリアできるかどうかに影響してしまう。
ガブ:チームで遊べると本作の良さがより際立ちますよね。チャットやボイスチャットだけでなく、ピンを出す指示でコミュニケーションもある程度取れますし。
野良でのマルチ参加は、ゲーム始めたてならば難易度ビギナーを強くおすすめしたいです。ビギナーであれば、キャンペーン開始チェックポイントが複数選択できるため、急遽チームから抜けなければ行けない場合でも抜けやすいので。カードをある程度開放したら&ACT・ステージ構成をある程度身につけてからであればベテラン野良もなんとかいけるかなと。
葛西:どっちにしても、カードを開放しないことには始まらないゲーム。しかも開放するまで物資ポイントを溜めるのがかなり時間がかかる。これも評価が厳しくなる部分ではある。
通常のキャンペーンのほかに、一人で遊べる「ソロキャンペーン」は物資ポイント集めに有効だっけ? 自分は触りしかやってないんだけど……。
ガブ:ダメですね……。ソロキャンペーンは現状遊ぶメリットがほぼほぼありません。報酬である物資ポイントが獲得できないので…… 。
池田:ソロキャンペーンはあまりやれてないんですが、あれ一体なんのためのモードなんですかね?
ガブ:持っていないカードを試せる・ステージ構成を先に見れる・キャンペーン進捗がソロとマルチで共有されるようなので、キャンペーン開始ポイントを増やせるという利点でしょうか……。このモードにおいては少なくても良いので、物資ポイントを貰えるようにしてほしかった。今後調整して欲しい点のひとつです。
葛西:マルチプレイゲームでも基本は一人で、野良で遊びたいプレイヤーってかなり多いと思う。だけどガブリエルさんが語ってくれた点も含めて「B4B」はかなり厳しいよね。
物資ポイント集めて、カードを集めないと始まらないゲームなのに、序盤に一人でポイントを集めるのが大変すぎる。僕らはチームでキャンペーンをクリアしていけたから、比較的物資ポイントは入手しやすかったけど、そういうプレイヤーばかりじゃないから。
池田:「B4B」は連携もいるし、ちょっとしたことでゲームオーバーに繋がりやすいので野良で独断で動くことが難しいですよね。いや、むしろ独断でほかの味方を全員見捨ててセーフルームに行くのが吉だ、みたいなことも起きて協力ゲームとして本末転倒というか。
葛西:カードが揃っていないとチームに貢献することすらできないし、ゲームを初めていきなりベテランを野良でプレイするとゲームが成立しないことすらある。
ガブ:本作はプレイヤーが知っておかなければならない定石が、どうしても多くなりがちなんですよね。カードの構成、ステージ構成、どこにキーアイテムや正解ルートがあるのか。即座の判断が大切になるゲームなので……!
葛西:ゲーム序盤のハードルがとても高い。「L4D」シリーズみたいに初心者でも映画的な緩急を感じられて、クリアに至りやすいデザインでもない。だから「L4D3」を期待してゲームをスタートすると落差がある。
池田:「L4D2」よりも定石が多いうえに覚えることが複雑ですよね。まずカードの効果を把握していないといけないこととか、、戦闘面も触手で捕まえられたら銃で撃つより殴って助けるとか、トールボーイという味方を捕まえるやつは弱点の部位をしっかり狙って倒したほうがいいとか。
ガブ:そうした定石が必要にも関わらず、コンティニュー回数が壁になっています。難易度やチームの練度をはじめ、僕みたいに頑張ってチャレンジしたくなっちゃう人たちにとってはむしろ「後に引けない」は燃える要素にもなり得ますが、ほとんどのプレイヤーの場合はそうじゃない気がするんです。
葛西:基本的に一回しかコンティニューできないシステムも印象を悪くしてるね。野良でせっかくチームが集まって、即興で連携をとれるようになっても、やっぱり全滅するとだいたい解散しちゃう。それも一人で遊ぶモチベーションを下げる原因になってる。
逆に今回の僕らみたいに、チームを組んでいる場合にはコンティニュー制限の意味をあまり感じないんだ。同じチャプターを立て直して遊べばいいだけなので。
Suzuki:コンティニュー回数の増加もしにくいですし、ある意味簡単にマッチを解散できるようにする施策だと思いますが、正直無くても良いと思います。
さらにコンティニュー回数が切れて、ミッション失敗になると物資ポイントは手に入らない厳しさですし。
葛西:ミッション失敗でポイント0はないよね。これも一人でプレイするのが苦しい理由のひとつ。チーム連携が難しい野良だと、クリアが大変なシーンも少なくないんだ。物資ポイントが手に入らないことにはカードも増やせないから、「B4B」で一番面白いところにたどり着くまで時間がかかってしまう。
ガブ:その反面、ホストが退室することで、キャンペーンごとのセーブデータが作成されるのは個人的にはうれしかったですね。難易度が高くなっても、ある程度の場面でセーブできるので。
池田:PvPの「スワームモード」に関してもいいですか?
葛西:ああ、この対人戦のモードもかなり賛否分かれる印象あったね……。
池田:これは「L4D2」と同じようにリドゥンと人間に分かれ、ゲームごとに交代して戦い、先にポイントを取ったほうが勝ちというデザインとなっています。ここでキャンペーンで猛威を振るった、さまざまな特殊リドゥン側を操れる楽しさは評価できるんですね。
葛西:これも友達で集まって、全員の役割が決まってる状態でプレイすると非対称のオブジェクティブ系FPSみたいな良さはあるよ。リドゥン側のピックによって戦略が変わるところも面白さがある。
池田:一方、野良だと他のプレイヤーがゲームの途中で退室する、いわゆる「萎え落ち」があって、4対4のはずが1対4になることもあってなかなか厳しいです。チームでやると盛り上がるんですが、野良でのPvPはあまり上手くいっていないと思います。
葛西:じゃあひと通り評価したところで、最後はメンバーそれぞれのスコアを挙げてまとめにしようか。
Suzuki:なるほど、この4人でプレイしたから、このままレビューを総括してしまうのは、4人Co-opゲームである『Back 4 Blood』として最適な気がします。しかし、これは某誌のレビューに近いものなのでは????
葛西:あっ、いま気づいた。
ガブ:いやもうスコアだしちゃいましょう!
池田:これはライター複合レビューですから多数の視点がある! いきましょう!
葛西:じゃあ僕から。「6点」ですね……。「L4D」って、ストーリーと同じく見知らぬ他人同士が偶然に出会い、一緒に生き抜く中で共闘を感じられた。それと比較すると、「B4B」の場合はスペシャリストだから、プレイヤーがスペシャリストになることを意識しないと共闘を感じるのも厳しいんだ。
現実でも何らかのスペシャリストになる過程は、最初に厳しい修練を用意され、素人がふるいにかけられるのと同じように、「B4B」でもゲームの最初が厳しい。ただゲームの一番面白いところまで行くのに時間がかかるのは失敗だと思う。
ガブ:個人的には「8点」です! 僕としては、「L4D」よりもストイックなゲームプレイ、そしてリプレイに意味がある「B4B」は非常に満足いく体験でした。今後もカードの構成を見極めながら高難度に挑戦していくというチャレンジをしていこうと思っています。
しかし、カードの開放システムやキャンペーンの難度調整、ステージにおける特殊感染者の細かな部分や物資ポイントの獲得など、どうしても粗が目立ってしまっている部分もあり、今後の改善アップデートに期待したいですね。
池田:最終的な個人的点数は「8点」となります。今後上がることも期待できます。フレンドと遊ぶかぎり本作は9点の出来だと思います。修正してほしい点は、「マッチングの評価システム」があるんだから野良プレイの萎え落ち防止やマッチングの品質向上や、カードのバランス、コンティニュー制の見直しですね。
本作の長所は「FPSとしての基本の快楽がある」という点です。シューターとしてエイムする、撃つ、当てる。その快楽がちゃんとある。ADSを実装してしゃがんだら集弾率が上がる。現代のFPSのデザインをしっかり踏襲していて撃つ楽しさがあります。
だからプレイして楽しいFPSという部分の土台はしっかりしているんですよ。『PAYDAY 2』や『Killing Floor 2』などの文脈をちゃんと見てたんだと感じさせられるんです。
Suzuki: 現時点の点数としては「7点」だと思います。普通に移動して敵を撃つ、打撃するだけなら楽しいのですが、前述の通り、難易度ビキナーでも特殊リドゥンの出現数が多すぎてゲームプレイのバランスが崩壊気味なのも含め、様々な問題点によって協力が楽しいゲームプレイを邪魔しているのが惜しいです。
カードデッキ要素でのゲームプレイ時の能力変化などは良いアイデアです。ただしゲームディレクターAI側の退廃デッキが強すぎます。『L4D』との差別化は最終的に出来ていると思いますが、迷いやすいマップであることも含め小さな問題点が多いのが残念です。
葛西:ということで最終的なIGN JAPANの公式スコアは、4人のスコアの平均値で少数点を切り捨てたものになる。各メンバーのスコアや意見のとおり、「B4B」は優れたところとダメなところがかなりくっきり分かれたものだといえるだろう。
池田:ちょっと葛西さんガブリエルさんSuzukiさんゲームの中では1つだったみんなの心もレビューという場では離ればなれじゃないですか!いろいろ言ったけどこのゲームは友達と遊べば大白熱! 皆さん今すぐ「B4B」を起動して暖を取りましょう!
Suzuki:おあとがよろしいようで……。