「SNSを使う人」は要注意!3大利点と重大NG1つ
「見つけた『読むべき記事』を毎朝シェアする」を10年以上続けて知った、SNSでのアウトプットのメリットとデメリットとは(写真:Melpomene/PIXTA)
テクノロジー、政治、経済、社会、ライフスタイルなど幅広い分野の情報を発信し、日本のインターネット論壇で注目を集める佐々木俊尚氏。「ノマドワーキング」「キュレーション」などの言葉を広めたことでも知られ、2006年には国内の著名なブロガーを選出する「アルファブロガー・アワード」も受賞している。その佐々木氏が、この度、『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』を上梓した。「ネット記事」「SNS」「書籍」などから、「読むべき」記事をいかに収集し、情報を整理し、発信していくか、自身が日々実践している「新しい時代の読み方」の全ノウハウを初めて公開した1冊で、発売後たちまち4万部を超えるベストセラーになっている。
そんな佐々木氏が、「『SNSを使う人』が知っておきたい3大利点と、重大NG1つ」について解説する。■「毎朝のシェア」にはメリットがあるよく読者の人に驚かれるのだが、私は毎日、およそ1000本の記事の見出しに目を通し、それをありとあらゆるスキマ時間を使ってチェックしている。当然、玉石混淆なわけだが、そこから「玉の記事」を見つけ出し、みなさんに無料で、ツイッターなどでシェアしている。2010年の終わりぐらいから始めた毎朝の恒例行事で、ほとんど一日も休まずに10年以上も続けている。
わたしは一介のジャーナリストで、テレビによく出演しているわけではない。有名な新聞や雑誌に連載があるわけでも、誰もが知っている大ベストセラーがあるわけでもない。大学教授などの立派な肩書もない。ただ自分の知的好奇心にしたがって、さまざまな情報を読んでいるだけなのだが、「自分が見つけた『読むべき記事』を毎朝、アウトプットしてシェアする」という恒例行事をおこなってきただけである。しかし、そのアウトプットを続けてきたことでの「メリット」や「デメリット」を知ることができた。
ここでは、SNSを使う人にぜひ知っておいてほしい「SNSでアウトプットを続ける3大メリット」と、「意外にやりがちな、避けたほうがいい重大NG1つ」について紹介する。1つめは、ツイッターで記事を紹介しておくことで、「過去に読んだ記事を見つけやすくなる」ということである。【メリット①】「過去に読んだ記事」を見つけやすくなるツイッターには「ツイログ(Twilog)」というウェブのサービスがある。これは、自分のツイッターのアカウントを登録しておくと、日々のツイートを自動的に記録してくれる無料のサービスである。
「検索機能」があり、「キーワード」で自分の過去ツイートを瞬時に探し出すことができる。さらに自分がツイッターで記事を紹介した際、一緒に投稿したコメントも保存してくれるのでとても便利である。過去に読んだ記事を探そうとする際に、記事の見出しを思い出せないということがある。しかし人間は、自分が書いた感想などのコメントは、覚えていることが多い。■「エピソード記憶」から情報を引っ張り出す人間の記憶には「意味記憶」と「エピソード記憶」がある。
「意味記憶」というのは「織田信長は1582年、本能寺の変で明智光秀の軍勢に襲われて自刃した」という、教科書に載っているような平板な情報を覚えておくことだ。それに対して「エピソード記憶」は、「本能寺の変というと、高校の日本史の先生が『本能寺の変はイチゴパンツ!』と教えて、『怖い風貌して何をカワイイこと言っているんだよ!』ってみんなで笑ったのを思い出すよな。そうそう、イチゴパンツだから1582年。それにしても愛すべき先生だった」というような、自分ごとに寄せて何かを覚えておくことである。
「そうだ、あのときあの記事は、『織田信長が読んだら笑うかも』ってコメントしたんじゃなかったっけ」そんな程度のつまらない記憶の引っかかりで、昔に読んだ記事も引っぱり出せるものなのである。「ツイログ」は、過去に自分が読んだ記事を「エピソード記憶」として保存してくれる意味を持つ。曖昧な記憶のとっかかりなどを使って検索され、過去から掘り出すことができるようになるのだ。2つめは、「毎朝、いくつかの記事を、わたしをSNSでフォローしている人たちに紹介、シェアする」と約束していると、「情報収集を『続ける』という精神的な強制力が生じる」ということである。
【メリット②】「続ける」という精神的な強制力が生じる「情報収集」というのは「たんなるインプット」であり、そのままでは仕事にはならない。わたしのような文筆業の仕事だと、原稿を書くこと、つまり「アウトプット」してはじめて仕事になり、収入が得られる。原稿だけでなく、トークイベントへの登壇やメディアへの出演など、どれもアウトプットである。インプットしているだけでは、お金にはならない。しかしこれを当たり前だと思ってしまうと、大変な「落とし穴」が待ち受けている。それは 「インプットをきちんと続けなければ、いずれアウトプットの源泉は絶えてしまう」ということだ。
■「インプット」を怠ると「アウトプット」も枯渇する実際、文化人や作家でも、そういう残念な人はよく見かける。テレビなどに出演してちやほやされ、何をしゃべってもありがたがられ、お金がジャンジャン儲かる経験をしているうちに「インプットがおろそか」になってしまうのだ。同じことを繰り返し話すことしかできなくなり、自分の昔の名著の内容をただなぞったような劣化コピー本を出して荒稼ぎしようとするようになる。そうなってしまうのは、その人の「情報量が枯れ果ててしまっている」からだ。
そうならないためには、「知の泉」につねに「新鮮で清涼な水」を流し込んでやらなければならない。山脈に雨が降り、深い森林に豊かにため込まれ、それが地下水となって流れ出して泉や田畑を潤してくれるように、「情報」というのは、わたしたちを枯れ果てさせないように潤してくれる大事な存在なのである。「いくつかの記事を紹介する」ということを毎日の約束にしておくと、情報をつねに集めつづけ、新鮮なものに触れるということが、強制力をともなった日課になる。
意図しなくても、つねに自分の中に「新鮮な情報」をそそぎ込みつづけることができるのだ。毎朝、記事の紹介を続けていると、「本当にありがたいです」「毎朝ありがとうございます」といったお礼のリプライをよくいただく。それが気持ちよく、うれしい。3つめは「『ギバー』を続けることで新しい出会いが生まれること」である。【メリット③】「ギバー」を続けることで「新しい出会い」が生まれる『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』(三笠書房)という本がある。アメリカのペンシルベニア大学ウォートン校という有名なビジネススクールで、史上最年少で終身教授になったアダム・グラントという人が書いたビジネス書だ。この本では、人間を以下の3種類に分けている。
●ギバー:人に惜しみなく与える人●テイカー:まっさきに自分の利益を優先する人●マッチャー:損得のバランスをつねに考える人昔は、部下の手柄を奪う上司がたくさんいて、そういう人が結局は出世することも多かった。だから「テイカー」がうまくいくと思われていた。■「ギバー」になるのは「新たな生存戦略」の1つしかしネットが普及して、人の評判がすぐに広まる現代には「ギバー」のほうがうまくいくというのが、グラントの主張だ。「ギバー」のいい評判は広まりやすい一方で、「テイカー」は「あの人は人から奪う人だ」という悪評も広まりやすい。
「ギバー」になると、多少は裏切られることもあるだろう。しかし「あの人はだまされたんだ」という評判は、だまされた人に対する「あんなに与える人なのに、ひどい目に遭うなんて」という同情とともに、だました者に対する「ひどい人だ」というマイナス評価にもなる。だから結果的には、「ギバー」が得をするように働く。つまり「ギバー」になることは、「新たな生存戦略」の1つでもあるのだ。私自身も、思わぬ出会いや仕事につながった経験も少なくなかった。
ボランティアには短期的な見返りはない。でも長い目で見れば、「とてもいい人間関係」と「どこかで見返りがやってくること」を期待できる希望があるのだ。最後にSNSでNGにしていることを紹介しよう。それは「決してマウンティングをしないこと」である。【重大NG】決して「マウンティング」をしない「マウンティング」というのはもともと、「サルや犬などが仲間の背中におおいかぶさり、後ろからまたがること」をいう。つまり、「相手の優位に立とうとする行為」のことだ。人間なのにマウンティングしたがる人は、社会にはたくさんいる。SNSにもいっぱいいる。
誰かが何か投稿すると、「いまさら何を言っているんだ」「そんなの前から知っていた」「それもいいけど、オレの持っているこの情報のほうがすごい」と相手をけなし自分の自慢話をするのは、全部マウンティングである。実世間なら、わざわざ強いことを言うのはけっこう勇気がいるので、目立ったマウンティングをする人はそうはいない。しかしSNSだと、発言するハードルはものすごく低い。パソコンやスマホのキーボードをちゃちゃっと触って送信や投稿のボタンを押すだけ、ほんの数十秒でマウンティングできてしまう。
でも、日ごろから付き合いのある上司や取引先からでさえマウンティングされるとうっとうしいのに、見知らぬどこの誰かわからぬ人物からSNSでマウンティングされて、喜ぶ人がいるだろうか?そういう人も皆無ではないと思うが、ほとんどの人はSNSのマウンティングには「チッ、うざいな」と思うだけである。マウンティングする人とされる人のあいだに、良好な関係ができることなどほとんどありえない。だから「SNSでマウンティングはしない」と、くれぐれも肝に銘じるべきである。
■「フラットな目線」の投稿・リプライをいつも心がけるSNSを上手に使い続けるためには、つねに善意と感謝の心を持ち、「フラットな目線」で投稿し、リプライするのがいちばんだ。そうすればいい人たちのフォロワーが増えるだろうし、みなさんが見るSNS空間も心地よいものになっていくだろう。ぜひ、「SNSに振り回されない上手なアウトプット」を身につけて、「知肉」を育ててほしい。
東洋経済オンライン
最終更新:3/24(木) 12:02
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