iPad Air(第5世代)は、機能は割り切っても処理性能にこだわりたい人に絶好の1台
AppleはSoCに「Apple M1チップ」を搭載した「iPad Air(第5世代)」を3月18日に発売した。iPadシリーズでApple M1を搭載したのは「iPad Pro」に続いて2台目となる。【この記事に関する別の画像を見る】 iPad Proの最廉価モデルが9万4,800円、「Mac mini」の最廉価モデルが7万9,800円、「MacBook Air」の最廉価モデルが11万5,280円なので、最廉価モデルが7万4,800円のiPad Airは最も安価なApple M1搭載デバイスだ。 今回は、iPad Proと使い勝手においてどのような違いがあるのか、そして性能に差はあるのかという点をチェックしていこう。■ iPad Airのスペック iPad Airは、OSにiPadOS 15、SoCに前述の通りApple M1チップ(高性能コア×4+高効率コア×4搭載の8コアCPU、8コアGPU、16コアNeural Engine)を採用。メモリは8GB、ストレージは64GBまたは256GBを搭載している。 ディスプレイは「Liquid Retinaディスプレイ」と名付けられた10.9型IPS液晶(2,360×1,640ドット、264ppi、60Hz、輝度500cd/平方m、P3、コントラスト非公表、反射防止、第2世代のApple Pencil対応)を採用。カメラは、背面に広角カメラ(1,200万画素、F1.8、29mm)、前面に超広角カメラ(1,200万画素、F2.4、14mm、視野角122度)を内蔵する。 ほかのiPadシリーズと同様にWi-Fi版とWi-Fi+Cellular版を用意。Wi-Fi+Cellular版は5G対応で、Nano SIMカードとeSIMを利用できる。Bluetoothのバージョンは5.0だ。 物理インターフェイスはUSB Type-C(充電、DisplayPort、USB 3.1)を装備。前モデルは最大5GbpsのUSB 3.0だったが、今回のモデルは最大10GbpsのUSB 3.1となっており、外部機器との通信速度が向上している。 本体サイズは約178.5×6.1×247.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量はWi-Fiモデルが461g、Wi-Fi+Cellularモデルが462g。28.6Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間はWi-Fiでネット利用/ビデオ再生時に最大10時間、モバイルデータ通信でネット利用時に最大9時間と謳われている。 スペックで残念なのはストレージが64GBと256GBしか用意されていないこと。せっかくApple M1を搭載したのだから、せめて512GBモデルを用意してほしかったところだ。■ Magic KeyboardとSmart Keyboard Folioのどちらを購入するか悩ましい iPad Airは、「Magic Keyboard」(価格は3万4,980円)、「Smart Keyboard Folio」(同2万1,800円)、「Smart Folio」(同9,800円)、「Apple Pencil(第2世代)」(同1万5,950円)などのアクセサリを利用できる。2in1的に利用するならぜひセットで購入しておきたいアイテムだ。ここで悩ましいのがMagic KeyboardとSmart Keyboard Folioのどちらを購入するかということ。 Magic Keyboardはシザー構造キーボードとトラックパッドが搭載されておりノートブック感覚で利用できる一方、キーボード部を背面に回せないのでタブレットとして利用するさいには取り外す必要がある。Smart Keyboard Folioはキーボード部を背面に回せばそのままタブレットスタイルで利用できるが、キーストロークが浅く、トラックパッドが存在しない。 筆者はMagic KeyboardとSmart Keyboard Folioのどちらも使っていたが、トラックパッドの有無は画面を操作すれば済むので決定的な差だとは感じなかった。また普段から薄型ノートPCばかりを使っているので、Smart Keyboard Folioのストロークの浅さもそれほど気にならない。 タブレットとして利用する際に外すのを前提にするならMagic Keyboard、常に装着しておきたいのならSmart Keyboard Folioというのが筆者のお勧めだ。とことん打鍵感にこだわりたいのなら、Smart Folioを装着して、お気に入りのBluetoothキーボードなどを組み合わせるのもいいだろう。■ iPad AirとiPad Proを比較してみた iPad Proと同じくApple M1を搭載したiPad Airだが、主に下記のような違いがある。 細かくスペックを比較してみると、多くの違いが存在する。この中で特に使い勝手を左右する差異は、ディスプレイのリフレッシュレート、スピーカーの数、背面カメラの構成、フラッシュの有無、インターフェイスの種類、ストレージ容量、生体認証というところだ。 256GBモデルのWi-Fi版で比較すると、iPad Airの価格は9万2,800円、iPad Proの価格は10万6,800円となり、その差は1万4,000円だ。機能差を考えると意外に価格が近いというのが率直な感想だが、実際の利用シーンを想定してみるとiPad Airで困ることはないようにも思える。 逆に現時点で「マスク着用時Face ID」がiPad Proで利用できないことを考えると、しばらくは外出時にはiPad Airのほうが便利そうだ。両機種の機能差にそれほどこだわりがないのなら、生体認証の違いを最重要視して選ぶことをお勧めする。■ iPad AirはiPad Proとほぼ同等の性能を発揮 性能については、12.9インチiPad Pro(第5世代)とApple A15 Bionicを搭載する「iPhone 13 Pro Max」と比較してみた。iPhone 13 Pro Maxはタブレット端末ではないが、同じSoCを搭載する「iPad mini(第6世代)」の代わりに参考用に計測を実施している。※USB 3.1接続SSDは「SSD-PH1.0U3-BA」、Thunderbolt 3接続SSDは「Portable SSD X5 MU-P85008」を使用 まずCPU性能について、iPad AirはiPad Proに対して、AnTuTu BenchmarkのCPUで約98%、Geekbench 5のMulti-Core Scoreで約99%と、わずかに下回るが、ほぼ同等のスコアを記録している。3D性能については、3DMark Wild Life Extremeで約98%、Basemark Metal Freeでは逆転して約102%のスコアを記録した。 実際のアプリケーションで比較してみても、iMovieで実時間5分の4K動画を書き出す時間を計測したが、iPad Proの2分55秒09に対して、iPad Airは2分57秒23とわずか約2秒強の差しかない。iPad AirはiPad Proとほぼ同等の性能を備えているといえる。 ちょっと気になったのがストレージ速度。JazzDiskBenchのSequential Readで、iPad Airが1,333.33MB/s、iPad Proが2,723.40MB/sと約半分の速度に留まった。iPad AirとiPad Pro、もしくは容量ごとに、異なる性能のストレージが使われている可能性がある。 外付けストレージから内部ストレージにファイルコピーする所要時間の差は予想の範疇。iPad AirにはUSB 3.1接続SSD「SSD-PH1.0U3-BA」、iPad ProにはThunderbolt 3接続SSD「Portable SSD X5 MU-P85008」をつなげており、規格上の最大速度の違いほどではないが、iPad Airでは2.36倍の時間がかかった。とはいえ、10GB(5ファイル)を25.69秒でコピーできるのなら、写真や動画の取り込みに実用的な速度だ。 YouTube動画を連続再生した動作時間は、iPad AirはiPad Proの1.24倍に相当する10時間20分18秒となった。ディスプレイの明るさ50%、音量50%と同じ条件で計測を実施したが、iPad Proは元々の輝度が高い分、今回の条件では不利に働いたのだろう。輝度のパーセンテージではなく、実際の輝度をぴったり合わせれば動作時間の差は縮まるはずだ。■ iPad AirやiPad Proにナイトモードを搭載してほしい カメラの数が少ないiPad Airだが画質はかなり高いレベル。さすがにiPhone 13 Pro Maxで撮影した写真とでは、拡大して比較すれば違いは分かる。しかし、少なくとも日中に撮影した写真なら27型ぐらいの画面で見比べても、両者の違いはなかなか分からない。 ただし、夜景の撮影についてはナイトモードを備えるiPhone 13 Pro Maxには遠くおよばない。4万3,780円で購入可能な「Xiaomi Pad 5」に夜景モードが搭載されているのに、Apple M1を搭載するiPad AirやiPad Proにナイトモードを搭載できない理由はないと思う。デバイスをできるだけ長く利用できるように、技術的に実装可能な機能は惜しみなく投入してほしい。 なお、iPad Airは1,200万画素超広角前面カメラを搭載することで、人をフレームに収め続ける機能「センターフレーム」に対応した。これですべてのiPadがセンターフレーム機能に対応したことになる。この前面カメラは画質自体も優れており、室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影可能だ。センターフレーム機能と相まって、Web会議にもってこいのデバイスであることは間違いない。■ 処理性能にこだわりつつ、機能を割り切れる方にとってコスパ優れる1台 Apple M1を採用したiPad Airは、iPad Proにより近いモデルへと進化したが、多くのスペックで差別化が図られている。しかし、実アプリケーションでの性能はほぼ同等だ。 セキュリティ性はともかく、「マスク着用時Face ID」がiPad Proで利用できない現在、Touch IDの方が使い勝手はいいと思う。処理性能にはこだわるが、機能はある程度割り切れる人にとって、iPad Airは非常にコスパ優れる1台といえる。
PC Watch,ジャイアン鈴木