“量子コンピュータに匹敵する日立の新型半導体コンピュータ”の正体
この発表が「日本で」注目を集めた理由の1つには、Webメディアの記事タイトルに「量子コンピュータ」が入っていたことがあると推測する。筆者が調べた範囲では以下のようなタイトルが並んだ。
「日立、量子コンピュータに匹敵するCMOS半導体コンピュータを開発」「日立製作所、D-Waveの量子コンピュータに対抗する新型コンピュータを試作」「日立が量子コンピューター似の新型コンピューターを開発、「2~3年で実用化」へ」「量子コンピュータ並み!? 「組み合わせ最適化問題」を瞬時に解く新型コンピュータ」「「1兆の500乗」通りから瞬時に実用解を導く半導体コンピュータ、日立が開発 量子コンピュータに匹敵」「日立、量子コンピュータに匹敵する性能の室温動作の新型コンピュータを試作」「常温で動作可能--日立、量子コンピュータに匹敵の新型コンピュータ試作」
全てのタイトルに量子コンピュータが入っている。ニュースリリースのタイトル「約1兆の500乗通りの膨大なパターンから瞬時に実用に適した解を導く~室温動作可能な新型半導体コンピュータを試作」には量子コンピュータの文字が含まれていないにも関わらず、である。
上に挙げた6本の記事タイトルの中で3本には「量子コンピュータに匹敵」の文字がある。ニュースリリースの本文を読むと、冒頭に「約1兆の500乗通りの膨大なパターン(組み合わせ)から適した解を導く「組み合わせ最適化問題」を量子コンピュータに匹敵する性能で、瞬時に解く新型コンピュータを試作しました。」との記述がある。この記述が転記されたのだろう。
量子コンピュータが持つイメージ、すなわち「現在のノイマン型コンピュータには現実的な時間で解くことが不可能な問題を、量子コンピュータは解いてしまう」、「不可能を可能にする」というある種のワクワクするようなイメージが、大きな注目を集めた理由だと思う。上記の記事の中には、1,400前後と数多くのツイートが発信されたものが2本ある。タイトルの量子コンピュータはメディアと日立の両者にとって「勝利のタイトル」だったとも言える。