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【特集】Windows 7に正式対応した「Boot Camp 3.1」試用レポート - PC Watch

【図1】Boot Campの最新版、バージョン3.1

1月19日、アップルはMacでWindowsの動作を可能とするソフトの最新バージョン「Boot Camp 3.1 Update」を公開した。このソフトによってWindows 7が、一般的なPCと同様に使えるのか、PCユーザーにも気になる存在ではないだろうか。今回は最新iMacでのBoot Campの使い勝手やパフォーマンスなどをレビューする。

●Boot CampがWindows 7に正式対応

Boot CampはMacの内蔵HDDにWindowsインストール用のパーティションを作成する「Boot Campアシスタント」とMacハードウェアに対応したWindows用のデバイスドライバ群から構成されている。バージョン3.1で変更されたのは後者のドライバ群だけで、Windows 7対応のほかApple Wireless KeyboardとMagic Mouseのサポート、トラックパッド使用時の不具合の解決などの変更が行なわれており、すべてのBoot Campユーザーに更新が推奨されている。

Boot CampはTiger(Mac OS X 10.4)時代の2006年4月にベータ版が公開され、Leopard(同10.5)以降に標準で付属している。Boot Camp 3.1はSnow Leopard(同10.6)付属のBoot Camp 3.0に対するアップデータとして提供されるため、Leopard以前の環境でWindows 7はサポートされない。

なお、2006年に発売された一部機種はWindows 7に対応しない。また、64bit版のWindows Vista/7に対応するのは「2008年前期モデル以降のMac ProとMacBook Pro」および「2009年後期モデル以降のiMacとMacBook」に限られるので注意してほしい。

●27インチiMacにWindows 7をインストール
iMac

筆者は昨年(2009年)11月に購入した27インチディスプレイモデルのiMac(Radeon HD 4850搭載)を使用しているが、この機種ではWindows 7のインストールDVDに含まれるATIのビデオドライバが2,560×1,440ドットの解像度に対応していないため、Windows 7インストール中に内蔵ディスプレイがブラックアウトしてしまい、インストール作業を続行できないという問題があった。

外部ディスプレイを接続するか、インストール途中でビデオドライバを削除すればインストールを完了することはできたが、Boot CampのWindows 7正式対応に伴い対策版のドライバも公開された。ダウンロードしたドライバと応答ファイルを格納したUSBメモリを挿したままWindows 7のインストールを行なえば、ドライバが自動的に組み込まれる仕組みだ。このドライバを使用して27インチiMacに64bit版Windows 7を問題なくインストールできることを確認した。

【特集】Windows 7に正式対応した「Boot Camp 3.1」試用レポート - PC Watch

Windows 7のインストールは、まず「Boot Campアシスタント」を使用してWindows用のパーティションを作成し、画面の指示に従いWindows 7のDVDからインストーラを起動。Windows 7のインストール後にSnow LeopardのDVDに格納されているBoot Campドライバを組み込み、最後にソフトウェア・アップデート経由でドライバの更新を行なうという流れになる。Windows 7のインストール自体はPCの場合と同じなので、パーティションの選択とフォーマットにだけ注意すれば、特に難しいことはないだろう。

なお、前述のようにBoot Camp 3.1で変更されたのはドライバ群だけなので、すでにBoot Camp 3.0で環境を構築済みの場合はドライバの更新だけ実施すればよい。

【図2】「アプリケーション」-「ユーティリティ」フォルダに格納されている「Boot Campアシスタント」を起動し、Windows 7をインストールするためのパーティションを作成する。Mac側のデータはそのまま保持される【図3】作成されたパーティションはFAT32形式でフォーマットされており、そのままではWindows 7をインストールできないため、インストーラでNTFS形式にフォーマットする。誤ってMacのパーティションを消さないよう、十分に注意してほしい【図4】ドライバ組み込み前はキーボードのイジェクトキーが効かないため、エクスプローラーでコマンドバーの「取り出す」ボタンをクリックしてWindows 7のDVDを取り出し、Snow LeopardのDVDに入れ替える
【図5】Snow LeopardのインストールDVDはMac/PC形式のハイブリッドディスクとなっており、PC用の領域にBoot Campドライバのインストーラが格納されている。インストーラを起動してドライバ群を組み込む。組み込み後にMacを再起動する【図6】「スタート」メニューから「Apple Software Update」を起動し、Boot Camp更新プログラムを適用してバージョン3.1にアップデートする。アップデート後にMacを再起動すれば作業はすべて完了だ
●MacはPCと同様に使える?

続いて使い勝手やBoot Camp固有の機能について見ていこう。

Boot Campドライバを組み込むと、通知領域の◆アイコンからBoot Campのヘルプやコントロールパネルにアクセスできる。インストール直後はデフォルト起動OSがWindows 7に設定されているため、必要に応じて変更しておこう。

MacとPCではキーボード配列が異なるが、Boot Camp環境ではMacの「コマンド」キーがPCの「Windows」キー、「かな」が「カタカナ/ひらがな」、「英数」が「無変換」のようにマッピングされる。iMac付属のApple Wireless Keyboardに存在しない「Print Screen」キーなどは「fn+左shift+F11」キーのようなキーコンビネーションで代用する必要があり、少々煩わしい。Windowsの使用頻度が高いならばPC用のUSBキーボードを接続して使うのもよいだろう。

スタイリッシュなデザインで人気のMagic MouseはSafariでは縦横のスクロールが可能だが、Internet Explorerでは縦スクロールしか使えない。また、残念なことに慣性スクロールやスワイプ(2本指で左右になでて進む/戻る)は現状ではサポートされていない。今後のドライバ更新で使えるようになることを期待したい。

【図7】通知領域の◆アイコンをクリックするとBoot Campのメニューが表示され、ここからヘルプやコントロールを開くことができる【図8】「Boot Camp コントロールパネル」では起動ディスクの設定や画面輝度、リモコンなどの設定が行なえる【図9】デフォルト設定ではF1-F12キーは音量や画面輝度の設定キーとして使用され、ファンクションキーとして使用する場合はfnキーを併用する必要があるが、「キーボード」タブの設定で動作を反転させることができる
【図10】MacとPCのキーコマンド対応表はヘルプに記載されているので必ず目を通しておこう【図11】Mac側では「システム環境設定」で「起動ディスク」の設定が行える。一時的に起動OSを変更したい場合はoption(alt)キーを押したままMacを起動すると起動ディスクの切り替え画面が表示される

Mac/Windows環境ではそれぞれ相手側のパーティションが読み込み専用でマウントされるため、データのやりとりも容易だ。双方から書き込みできる領域が必要な場合はFAT32形式でフォーマットしたUSBストレージデバイスを使おう。このほか、内蔵Webカメラ(iSight)や別売りの赤外線リモコン(Apple Remote)、内蔵無線LAN(AirMac)などのデバイスも使用できる。また、CPUは仮想化支援機能(Intel VT-x)をサポートしているため、Windows XPモードも使用可能だ。

【図12】Windows側からMacのHFS+パーティションを読み込み専用で参照できる。Mac側ではNTFSパーティションを読み込み専用できるほか、FAT32パーティションを読み書きすることが可能だ【図13】内蔵Webカメラなど、Mac固有のハードウェアも問題なく使用できる。リモコンではiTunesやWindows Media Playerの操作が可能だ【図14】Windows 7 Professional以上のエディションであればXPモードを使用して古いWindowsアプリケーションを動かすこともできる

気になるパフォーマンスだが、Core i7搭載の最新iMacでのWindows エクスペリエンス インデックスのスコアは最も低いハードディスクの5.9以外はすべて7点台という値であり、FINAL FANTASY XI ベンチの値は10,000を超えるなど、Windowsマシンとして見ても高い性能を持っていることが分かる。

iMac(Late 2009)のスペック・CPU:Intel Core i7-860(2.8GHz)・チップセット:Intel P55 Express・ビデオチップ:Radeon HD 4850(512MB)・メモリ:PC3-8500 DDR3 2GBx4・HDD:Seagate ST31000528ASQ・OS:Windows 7 Enterprise評価版 (x64)

【図15】Windows エクスペリエンス インデックス

【表】FINAL FANTASY XI Official Benchmark Vana'diel Bench 3

Low10198
High7891
●まとめ
【図16】Parallels DesktopやVMware FusionではBoot Campでインストール済みのWindowsを使って起動する仮想マシンを構築可能だ。1本のOSライセンスを両方の環境で共有できる

Boot Camp環境の性能は同じCPU/ビデオチップを搭載したPCと同等であり、ハードウェアの機能をフルに活用できるため仮想マシンでのプレイが困難な3Dゲームも問題なく動作する。キーボード配列など細かな点を除けば通常のPCと同じように使えると考えてよいだろう。また、OS標準機能であるため、Windowsの価格以外の導入コストが不要なこともメリットと言える。一方で、OSの切り替えには再起動が必要なため、仮想マシンのようにWindowsとMac OS Xを同時に使用できないというデメリットもある。

なお、Parallels DesktopやVMware FusionはBoot CampでインストールしたWindowsを使って仮想マシンを起動する機能をサポートしている。この場合、通常は仮想マシンを使用し、3Dゲームをプレイする場合だけBoot Campで再起動するという運用が1本のOSライセンスで可能だ。

ただし、両ソフトともBoot Campパーティションを割り当てた仮想マシンではサスペンドとスナップショットという仮想環境ならではの機能が利用できないという制限がある。ライセンス数に余裕があるならば、両方の環境に別個にWindowsをインストールしたほうが使いやすいだろう。