信号機を壊したら300万!? かすり傷程度でも修理費用が請求されるのか? 弁護士さんに聞いてみた
車線が多い幹線道路などで設置されているセパレート矢印式の信号機
世界的に見ても信号機や自販機など、公共物が多いと言われる日本。内閣府が公開している内閣白書によれば、信号機だけでも約20万800基、 一般社団法人日本自動販売システム機械工業会の調査によれば、2020年時点で自販機は約404万5800台が設置されている。【画像】一口に信号機といっても形やタイプがいっぱいある!つまり、クルマやバイクで運転している限り、人だけではなくそんな公共物に当たる可能性もあるわけだが、公共物を壊した場合にかかる修理費用をご存じだろうか。たとえば、信号機自体は約120万円からとなるが、柱ごと倒壊した場合は信号柱や工事費用などが加算されるため、総額では約300万円を超える。標識は約10万円~100万円程度、電光掲示板は約1000万円以上もする。ちなみに、ガードレールの修理費用は1m辺り=4500円の計算となっている。電光掲示板に関しては意図的に物を投げたり、クルマやバイクなどが宙を舞わない限りは物損事故を起こすケースは考えづらいが、信号機や標識、ガードレールなどは交通事故などによってぶつかり、修理費用を請求されることがあるはずだ。そこで当記事では、信号機やガードレールなど公共物を壊し、その場から逃げて罪を逃れようとしたら逮捕されるのか、すり傷程度のものでも修理費用を請求されるのか、交通事故や刑事事件に詳しい坂口 靖弁護士に話を聞いてみた。
公共物を破壊したら逮捕されるケースもあり得る!?
──信号機やガードレールなど公共物を壊し、その場から逃げて罪を逃れようとする人がいたとします。その場合、もし相手を特定できる証拠があれば、警察は逮捕するのでしょうか?公共物を破損したのにもかかわらず、その場から逃げて罪を免れようとした場合は、警察が物損事故を起こした本人を逮捕する可能性はあり得ます。まず、物損事故や交通事故を発生させた場合、事故の発生等について最寄りの警察署に報告するべき義務や危険発生防止のための措置をとるべき義務があります(道路交通法72条1項)。したがって、公共物を壊したにもかかわらず、その場から逃走した場合はこの「報告義務等違反」として、道路交通法違反の刑事処罰を受ける可能性があります(道路交通法119条1項10号)。また、逃亡のおそれが高いと警察に判断される可能性もあるため、逮捕に繋がってしまうケースは十分にあり得ます。──たとえば、かすり傷や擦った程度でも修理費用を請求される可能性はありますか?かすり傷程度の場合であっても修理費用を請求される可能性はあります。しかし、道路上の公共物であるガードレールに限っては、石や砂といった投擲物が飛んでくるなど、多少傷が付いたりすることが想定されるため、軽微な擦り傷に留まり、道路使用上において特段影響が生じないような場合においては、わざわざ修理費用を請求しないということが多いようです。なお、私物である場合も公共物と同様の責任を負うことになりますが、私物の方が軽微な傷等でも当然のように損害賠償請求がなされることが多いものと思われます。──公共物を破損させてしまったが、もしその修理費用に納得がいかなかった場合、示談交渉などでその請求内容を訂正させることは可能なのでしょうか?修理費用に納得がいかない場合は、その請求内容を訂正させることが可能です。修理費用等が妥当なものであるか否かについては、検討の余地があるものと思われますが、示談交渉等によって修理費用金額を修正し、双方が合意することは十分に可能であるものと考えられます。ただし、当て逃げをしている場合には、前述の刑事処罰を受ける可能性を可否するという側面から、請求金額を支払わざるを得ないという場合も多いと思われます。なお、任意保険に加入している場合であれば、修理費用については保険会社の方で妥当な金額にて協定を成立させてくれるものと考えられます。監修●坂口 靖 まとめ●モーサイ編集部・小泉元暉
■坂口 靖(さかぐち やすし)大学卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」などのラジオ番組制作業務に従事。28歳のとき弁護士を目指し、3年の期間を経て旧司法試験に合格。1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当する。以後、弁護士としてさまざまな刑事事件に携わり、YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」でも活動中。事務所名:プロスペクト法律事務所