ベントレーS1コンチネンタル・ジェームス・ヤング4ドア レストアで第二の人生 後編
技術と情熱を持った職人との出会い
ベントレーS1コンチネンタルのレストアでは、オリジナリティの高さにこだわっていたオーナーのアーニー・ウォレンダー氏だが、エンターテインメント・システムの装備も望んでいた。当然、クラシックなインテリアと調和させる必要があった。
そこでレストアを進める友人のマシュー・リース氏は、ジャガー・ランドローバーのヘッドユニットに目を付けた。ナビとブルートゥース、デジタルラジオに対応し、比較的安価だったという。
ともに作業を進める木工職人のアヤヴェン・リース氏は、ボストン・アコースティックス社製のスピーカーが収まるエンクロージャーを、フロントドアとCピラーに製作。当時モノのタンノイ社製スピーカーと、雰囲気も合わされている。
内装を予算内で仕上げる職人探しも、リースの重要な仕事の1つ。「卓越した技術と情熱を持った、クルマへの理解が高い職人さんに出会うことは、とても幸運なこと。時間さえ許せば、何でも作り直すことができました」
キーシリンダーのリビルドは、カギを得意とする地元業者へ依頼。クリーム色のレザーシートは、GCJオートモーティブ・リコンディショニング社に仕立て直してもらった。
ロールス・ロイスのレストアを専門とするグレン・グリンドロッド氏からは、沢山の写真をメールで提供してもらった。ベントレーの、完成後の正しい姿を確認するために。
走行距離はステッカーのディーラーで確認
イアン・デイビス氏とエイドリアン・ニール氏には、ボディパネルの仕上げと塗装を依頼。ボディサイドの滑らかなラインは、職人によるフリーハンドだ。ホイールキャップのデザインにも呼応している。
「ホイールキャップは機械ではなく、最終的に手作業で仕上げたそうです。費用はたった80ポンド(1万2000円)。素晴らしい技術に感銘し、上乗せして支払いました」。とリースが笑顔を見せる。
エンジンは、さほど苦労なく始動した。イアンの父、アルン・デイビス氏は、既にリタイアしていたものの腕利きのメカニックだった。耳で音を聞きながらエンジンを調整したが、美しいメカニズムに携われたという理由で、お金は取られなかったという。
そこでウォレンダーは上等なモルト・ウイスキーを購入。アルンへ贈っている。
レストアに終わりの光が見えた頃、ベントレーの歴史も徐々に明らかになる。初代オーナーは、テレビ・キャビネットの生産で富を得た、ビクター・エルコラーニ氏だった。
コーチビルダーのジェームズ・ヤング社のボディを好み、約8000ポンドというS1コンチネンタルの価格もいとわなかったのだろう。彼は妻と移動中、ベントレーで事故にあっている。左のフロントフェンダーに、きれいに直された跡が見つかった。
その後、S1コンチネンタルはフランスと北米へ。マーシャル社製のパーキングライトが付いていた。短い走行距離は、リアウインドウに残っていたディーラーのステッカーを手がかりに、間違いないことが確認された。
流麗なジェームズ・ヤング社のボディ画像 S1コンチネンタルと最新のフライングスパー ピニンファリーナのロールスも 全73枚