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ニュース フル2.5Gbps対応でゲーミングを再定義した目の付け所が秀逸。アイ・オー・データのWi-Fi 6ルーター「WN-DAX3000QR」

ニュース フル2.5Gbps対応でゲーミングを再定義した目の付け所が秀逸。アイ・オー・データのWi-Fi 6ルーター「WN-DAX3000QR」

 アイ・オー・データ機器から、WAN/LANともに2.5Gbpsに対応したWi-Fi 6ゲーミングルーター「WN-DAX3000QR」が発売された。2.5Gbps有線LANのフル対応機を実売2万円で提供する、ありそうでなかった画期的な製品だ。【この記事に関する別の画像を見る】 「ゲーミング」を再定義しているのも特徴で、もはやゲーム環境が特別なものではないことを再確認させられる。これからのトレンドになりそうな意欲作と言っていいだろう。■ ありそうでなかったWAN&LANの2.5Gbps対応 素晴らしいのは、これまで市場になかった製品を具現化している点だ。 以下の表は、2022年2月末時点で市販されている2.5Gbps以上の有線に対応した製品の一覧だ。注目して欲しいのは、WAN、LANともに1Gbpsを超える速度で通信可能な製品がほとんどない点だ。 バッファローの「WXR-6000AX12S」がWAN、LANともに10Gbpsで通信可能だが、実売価格が3万円以上と高価で手を出しにくかった。海外メーカー製ルーターは、2.5Gbps以上の有線LANへいち早く対応したが、その対応はWANまたはLANのどちらかだけの製品が多かった。 そんな中、アイ・オー・データ機器から発売されたのが、今回取り上げる「WN-DAX3000QR」だ。2.5Gbps対応のWAN×1と、同じく2.5Gbps対応のLAN×1、さらに1Gbps対応のLAN×3を搭載することで、1Gbps以上の契約があればインターネット回線からPCまで、エンドツーエンドで2.5Gbpsの通信が可能となっている。 もちろんWi-Fiも最大2402Mbps(2ストリーム、160MHz幅)に対応しており、有線だけでなく、Wi-Fiも約2.5Gbpsで通信が可能となっていて、家中の機器を全て2.5Gbps化することができる。 2.5Gbps対応機器は、ノートPCなどでも採用例が登場しつつあるし、NASやスイッチなども低価格化が進んで、身近な存在になりつつある。 本製品は、こうした市場のトレンドをいち早くとらえ、ありそうでなかった製品を実際に市場へと投入した画期的な製品と言える。2万2800円の価格が実売で2万円以下にでもなれば、さらに素晴らしいが、個人的には「いいところ突いてきたなぁ」と、素直に感心させられた製品の1つだ。■ 「ゲーミング」をよりカジュアルな入門用へ再定義 本製品が画期的なのは、それだけではない。「ゲーミング」を再定義しているのだ。 通信機器の世界で「ゲーミング」というと、派手なカラーリング、物々しいアンテナ、QoSなどのややこしい機能が思い浮かぶが、本製品には、こうした独特の文化の香りが一切ない。 外観はブラックのヘアライン加工で、アンテナは内蔵。機能についても詳しくは後述するが、至ってシンプルなものだ。これで「ゲーミング」とはいかに? と疑問に思うかもしれないが、筆者もこのコンセプトには賛成だ。 なぜなら、ゲーミングはもはや特別なものではないからだ。昨今では、低年齢層をターゲットに入門用の低価格なゲーミングノートPCなども登場している。市場は、プロ向けの高性能なゲーミングプロダクトから、よりカジュアルな入門用へと移行しつつある。 つまり、プロがコンマ1秒を争う世界だけでなく、誰もがゲームを手軽に楽しめる「ゲーミング」へと、言葉の定義が変わりつつあるわけだ。 本製品は、こうした市場の動向を的確にとらえている。小中学生がゲームの実況に憧れ、低価格なゲーミングPCを入門用に購入した際、それをPCスペック通りの2.5Gbpsの有線LANや2402MbpsのWi-Fiで簡単に接続できる――。 こうした当たり前にゲーミングPCがつながる製品こそが「ゲーミングルーター」であるというのが、本製品のメッセージなのだろう。 前述した2.5Gbpsのトレンドにしろ、ゲーミング市場の動向にしろ、本製品は、コンセプトが非常に練られた製品となっている。日本メーカーが考える新しいゲーミングルーターはこうあるべき、というトレンドを市場に提案した製品と言える。■ 見た目はまとまっているが、想像以上に「デカイ」 製品は、想像以上に「デカイ」。 Amazon.co.jpの箱が想像より大きかったので「ん?」と思ったが、箱を開けて製品を手にしたときに、思わず「でっか!」と声が出てしまった。 サイズは、270×67×218mm(幅×奥行×高さ)となっており、横幅が30cm近くあり、とにかく存在感がすごい。 見た目はまとまっているためか、写真ではとコンパクトな印象を受けるのだが、かなりの設置場所を要求する。2.5Gbps化による放熱の関係で大きくなっているかもしれないが、もう少し小型化できなかったものかと、残念に感じる。 ただ、デザインは凝ったものだ。各種のインターフェースは底面に用意され、付属の台座でうまくケーブルをカバーしつつ電源ケーブルも含めた複数ケーブルを取りまとめて1か所から出るように工夫されており、すっきりとした印象となっている。 デザインはシンプルながら凝ったものだが、機能面もシンプルながら必要十分だ。もちろん、インターネット接続はIPoE IPv6接続の各方式に対応している(対応状況は『IPv6(IPoE)接続動作確認済みサービス一覧&対応機器』を参照)、既存のWi-Fiルーターの設定情報を引き継げる機能も搭載しているし、同梱のセットアップでも「交換する」場合が最初に記載されている。 余談だが、同梱のセットアップガイドが、本製品は2色で塗り分けられている。こういう工夫は、本当に日本メーカーの巧みなところだ。筆者は、最近、Wi-Fiルーターの本体はもちろん、取扱説明書にも注目しているのだが、各メーカーがしのぎを削って分かりやすさを追求しているせいか、どのメーカーも見るたびに改善されており、担当者の苦労が伺える。 セットアップにはウェブブラウザーを用いる方式で、インターネット回線は自動的に判別されるが、本製品はアクセスポイントモードを積極的に使う設定になっている。 これは国内メーカーとしても珍しい。他社製品は本体のスイッチでルーターモードとアクセスポイントモードを切り替えるスタイルだが、本製品のスイッチ(底面)は「リピーター」と「ルーター/AP(標準)」という組み合わせになっている。 このため、上位にルーターが存在することを確認すると、積極的にAPモードで稼働する。 他社製は、上位にルーターが存在する場合、インターネット接続方式をDHCP(自動取得)にするのが一般的で、いわゆる2重ルーターの構成となる。NAT越えが特別なものではなくなった現在では、個人的には、一般用途なら2重ルーターでも問題ないという立場だが、本製品は2重ルーターを積極的に回避する。 これも、よくよく考えると、現在のトレンドをよく押さえている。現在、多くのインターネット接続環境では、ホームゲートウェイやルーターがレンタルで供与される。こうした環境でユーザーが求めているのは「ルーター」ではなく「Wi-Fi」なのだから、ルーター機能はレンタル品に任せ、Wi-Fiのみを本製品がカバーしようという発想だ(もちろんルーター機能がない環境であれば本製品が担う)。なかなかよく考えられた製品だ。■ セキュリティは5年も無料のフィルタリング機能 付加機能として特徴的なのは、危険サイトをブロックする「ネットフィルタリング」機能が5年間無料で利用できる点だ。 アルプスシステムインテグレーションのサービスを利用したもので、ほかのメーカーが採用しているセキュリティ機能と異なり、シンプルなフィルタリングサービスだが、これにより、フィッシングサイトや有害サイトなどへのアクセスを遮断できる。 端末側でセキュリティ機能を持たないゲーム機やIoT機器などが危険なサイトへアクセスするのを防止できたり、子どもが有害なサイトへアクセスしないように制御することができる。 端末の制御にはMACアドレスを利用し、大人の端末は全てのサイトにアクセス可能で、子どもの端末だけ特定のカテゴリのサイトへのアクセスを禁止するなど、細かな制御も可能だ。MACアドレスベースで端末の利用時間を制限する「ペアレンタルコントロール」機能も同様に利用できる。 これらの機能は、前述したアクセスポイントモードでも動作する上、IPoE IPv6接続環境のIPv6、IPv4のいずれでも動作する。DS-LiteやMAP-E接続で無効になるようなことはないので、安心して利用できるだろう。 ただし、最近ではWindowsでも、MACアドレスをワンクリックでランダム化できるなど、本製品に限らず、こうした機能の限界が訪れつつある。このあたりは、新たな対策を各メーカーに求めたいところだ。■ 2.5Gbpsフルスピードには「NATアクセラレータ」が必須 気になるパフォーマンスを計測してみよう。まずは、WAN、LANともに2.5Gbps化された有線のスピードを検証してみた。 10Gbps対応の光ファイバー接続サービス「auひかり ホーム10ギガ」を利用し、インターネット接続をDHCPに手動設定(自動設定だと前述したようにAPモードになってしまうため手動構成)し、2.5Gbps対応のPCを本製品の2.5Gbpsポートへ接続して速度を計測したのが以下の結果だ。比較として、auひかりのホームゲートウェイに2.5GbpsでPCを直結した場合の値も掲載する。 標準設定のままだと、上記のように1.6Gbps前後と、正直、あまり速くない。直結時は2.3Gbps前後なので、明らかに本製品がボトルネックになっている。 これを改善するには、ルーターの設定画面(詳細設定のNAT)で「NATアクセラレータを有効にする」をオンにする。これにより、ハードウェアによるNAT処理が実行されるようになり、高速化が期待できる。 変更後の測定結果は以下の通りだ。無事に直結時と同様に2.3Gbps前後の速度が出るようになった。NATをルーターに任せるケース(DS-LiteはISP側のNATなので不要)では、本機能をオンにすることをお勧めする。■ 下り約1.3Gbpsで、Wi-Fi性能もかなり優秀 続いて、Wi-Fiの性能をチェックしていこう。以下は、木造3階建て筆者宅の1階に本製品を設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。PCは160MHz幅が有効なので2402Mbpsでリンク可能で、サーバー側ももちろん2.5Gbpsの有線で接続してある。※サーバーCPU:Ryzen 3900X、メモリ:32GB、ストレージ:1TB NVMe SSD、OS:Windows11※クライアント:Microsoft Surface Go 2(Intel AX200) 結果を見ると、2.5Gbpsの恩恵で、近距離は下り約1.3Gbpsとかなり高速だ。これならゲームなどで数十GBのファイルをダウンロードしてもストレスを感じにくいだろう。 長距離も優秀で、筆者宅でもっとも遠く、遮蔽物も多くなる3階窓際で下り437Mbpsとこちらも非常に速い。筆者宅のようなそれほど広くない住宅では、これで十分カバーできる印象だ。 ただ、本製品の無線は2ストリーム、160MHz幅で2402Mbpsなので、この帯域のみを複数台の端末で共有するとなると、少々、心もとない。複数台の同時通信が必要なら、4ストリーム4804Mbpsが欲しくなるところだが、それはより上位のモデルが今後、登場することに期待したいところだ。■ 完璧ではないが、いい選択肢 以上、アイ・オー・データ機器のLAN、WANともに2.5Gbps対応のWi-Fi 6ルーター「WN-DAX3000QR」を実際に試してみたが、とにかく企画力の高さと市場動向のとらえ方が的確な製品と言える。 PCから回線まで、有線でも無線でも約2.5Gbpsで通信できるメリットは大きい。1Gbpsを超える回線や2.5Gbps対応のNASなどをすでに利用しているなら、有力な候補となるだろう。 想像以上に大きい本体サイズが気になる上、APモードを積極的に選ぶ点やNATアクセラレータが標準オフの点など、おまかせではなくユーザー自らが気にかけてやる設定もあるが、総じていい製品だ。 個人的には、サイズがもう少し小さく、価格が2万円以下だったら完璧で、さらに欲を言えば、設定画面のデザインが古臭く感じたが、そこまで望むのは贅沢というものだろう。

INTERNET Watch,清水 理史