Wi-Fi 6EはWi-Fi 6よりも速いか遅いか、実験環境で性能測定
海外の一部の国・地域では、既にWi-Fi 6Eが使用可能になっていてWi-Fi 6Eに対応する無線LANアクセスポイント(AP)が流通している。ここではこうしたAPを対象として、6GHz帯の無線LANがどの程度のパフォーマンスを持つかを紹介していく。
米国では周波数5925M~7125MHzが無線LAN向けに使用可能となっており、対応したAPがいくつか販売されている。その中から筆者はこのほど、台湾・華碩電脳(エイスース、ASUS)の「GT-AXE11000」を入手した。GT-AXE11000は2.4G/5G/6GHz帯のトライバンドに対応した屋内用のAPである。業界団体であるWi-Fi Allianceの「Wi-Fi CERTIFIED 6」と「6 GHz Spectrum Capabilities」認証を取得している。
ASUSのGT-AXE11000(撮影:東陽テクニカ)[画像のクリックで拡大表示]6GHz帯対応のWi-Fiクライアントとしては、英Spirent Communications(スパイレントコミュニケーションズ)の「Spirent TestCenter C50 アプライアンス Wi-Fi 6E 対応 ハイ Radio モデル」(以下、Spirent TestCenter C50)を用いた。Spirent TestCenterは通信業界ではよく使われている測定器で、ルーターのパフォーマンスやスケーラビリティーを測定できる。今回用いたモデルでは有線LANポートでデータ送信サーバーを、無線LANポートでWi-Fiクライアントをエミュレートすることで、APを効率的に評価できる。
Spirent TestCenter C50(右)とシールドボックス(左)(撮影:東陽テクニカ)[画像のクリックで拡大表示]なお6GHz帯の無線LAN利用は日本国内では認可されていないため、測定対象となるAPはシールドボックス(電波暗箱)内へ設置し外部から遮断した環境とした。Spirent TestCenter C50とシールドボックス間はLANケーブルおよび同軸ケーブルで接続し、シールドボックスの開閉時にはAPの電源をオフにするなど、6GHz帯の電波が外部に漏れないよう注意しながら測定を実施した。
測定ツール「TestCenter IQ」の画面例(出所:東陽テクニカ) [画像のクリックで拡大表示]今回の測定について内容と結果を見ていこう。
まずAPの転送性能を知るためフォワーディングレートを測定した。フォワーディングレートはRFC 2285で定義されているネットワーク装置の転送性能を示す値である。測定方法はRFC 2889で詳しく解説されているが、トラフィック印加時間(ここでは、装置にテスト用のトラフィックデータを流す時間のこと)にAPが転送できたフレーム数からフォワーディングレートが算出できる。なおRFC(Request for Comments)は、インターネット関連技術の標準化を手掛けるIETF(Internet Engineering Task Force)が公表している技術仕様である。
今回は次の条件で5GHz帯と6GHz帯それぞれでパフォーマンスを測定した。
フレームサイズ(Frame Size) | 1518バイト、512バイト、128バイト |
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トラフィック方向(Direction) | ダウンリンク(有線LAN→Wi-Fiクライアント方向) |
トラフィック負荷(Intended Load) | 1000Mbps |
印加時間(Duration) | 30秒間 |
APには5GHz帯と6GHz帯のどちらもチャネル幅を80MHzに設定し、Wi-Fiクライアントは2×2 MIMOに対応する1端末のみの接続とした。認証方式はWPA2-Personalで統一した。
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